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Vol.8 Winter 2001-2002

今、ネットで一番元気な旅行部門

テロの打撃からいち早く回復したオンライン旅行サイト

 9月11日のテロ事件で最大の打撃を受けたのは、旅行業界だった。オンライン旅行サイトでも、予約数が激減し、株価は暴落した。テロの翌週、Expediaでは取扱量が60%低下し、大手航空会社5社が設立した総合旅行サイト、Orbitzでは早々と従業員の10%をレイオフした。10月には、オンライン総合旅行サイト最大手のTravelocity.comが、取扱量は通常の70%まで戻していたものの、全従業員の10%にあたる320人の解雇と、新規雇用凍結、カリフォルニア州のコールセンター閉鎖を発表した。

 しかし、オンライン旅行業界はリアルの旅行業界より一足先に、ほぼ通常レベルの取扱量に回復した。それどころか、Orbitzでは、10月末に6月の創立以来、最高の予約件数を記録した。やはり航空会社が出資し、売れ残った座席を販売する格安航空券販売サイト、Hotwireや、顧客が料金を指定できるPriceline.comも、11月には通常レベルまで回復した。これらのサイトのビジネスモデルは、経済の先行きを心配し、安価な航空券やホテルを求める消費者のニーズにマッチしたものだった。

 ホテル割引予約サイト、Hotel Reservations Network(HRN)は、テロ後、新たに500以上のホテルを追加した。テロの影響で宿泊客が減少し、空室を埋めるためにこうしたホテル・コンソリデーターと呼ばれるサイトを利用するホテルが増えたためだ。テロ後、特に高級ホテルが苦戦しており、9月の予約件数は、ホテル全体では昨年比16%減であったのに対し、高級ホテルでは29%も減少した。これまでブランドイメージを気にして、こうした割引ホテルサイトを利用しなかった高級ホテルだが、背に腹は変えられなかった。HRNでは、2001年夏に4つ星、5つ星ホテル専用の予約サイト、allluxuryhotels.comを立ち上げている。

 11月時点では、ほとんどのオンライン旅行サイトが通常の取扱量の10%減以内に戻したのとは対照的に、航空会社はまだ通常の取扱量の28%減、ホテルは売上が15−17%減と、回復に時間を要している。

次々と黒字転換する旅行サイト

 実は、オンライン旅行部門は、ネット販売で、今、一番元気な部門である。2000年、オンライン小売業者らが次々につぶれる中、旅行部門の売上は、コンピューター・ハードウエア部門を抜いて、オンライン小売売上で第1位となった。2000年のオンライン旅行売上は130億ドルと、前年比の倍近くに伸び、2001年には39%増、202億ドルに達すると見られている。また、2002年には旅行業界全体の売上の15%を占めると予測されている。

 各旅行関連サイトでは、売上を伸ばすとともに、次々と黒字に転じている。先に紹介したHRNは、他社に先駆け、2000年に利益を計上した。80年代にブリック&モルタルの旅行代理店として始まり、最近、大手Cendantに買収されたCheapTicketsも、2000年から黒字である。同社では、フリーダイヤルとインターネットによる販売が売上の98%を占めるに至っており、2001年夏、ホノルル以外の店舗を閉鎖した。

 さらには、2001年第1四半期、オンライン旅行業界シェア第一位のTravelocity.comと第2位のExpediaの両社が、四半期ベースで黒字に転じた。両社とも、コスト削減ではなく、売上増によって利益を生み出した。両社は、第2、第3四半期と続けて利益を計上しており、年間ベースでも利益を計上する見込みだ。

 2000年には赤字が増大し、存続が危ぶまれていたPriceline.comも、経営再建がうまくいき、2001年第2四半期と第3四半期には利益を計上した。

ネット販売に向く旅行サービス

 ネットで航空券などを購入する消費者が増え、オンライン旅行サイトがこれだけ伸びたのは、販売しているのが物流を必要としないサービスであり、ネットに向いた商品である点が大きい。

 アメリカでは、ネットで購入した航空券の多くはeチケットとして利用される。eチケットであれば、ネット上で表示されたり、電子メールで送られてきたりした予約確認を印刷して、空港に持っていくだけですむ。予約の変更もオンラインで簡単にできる。

 航空会社やホテルなどのサプライヤーにとっては、販売をネットに移すことにより販売コストの削減を図ることができる。アメリカでは、航空会社は一般に航空券一枚あたり22〜32ドルの手数料と販売費を支払うが、消費者に直接eチケットを販売することにより、航空券一枚あたり6〜8ドルのコストを削減できるという。ホテルでは、予約一件あたりのコストは、オフラインの6ドルに対し、オンラインでは3.5ドルといわれている。

ネット進出に熱心な航空会社

 これまで航空券のオンライン販売は、主に旅行サイトに任せてきた航空会社だが、販売コスト削減のために、自社のウエブサイトでの航空券販売に本格的に力を入れ出した。

 アメリカの主要航空会社5社が共同で出資した旅行予約サイト、Orbitzは、立ち上げ後数ヶ月で一挙に、Travelocity.comとExpediaに次ぎ、オンライン旅行市場シェア3位に踊り出ている。主要航空会社6社は、2000年10月に元コンチネンタル航空重役によって創立された格安航空券販売サイト、Hotwireにも出資している。

 一部の航空会社では、オンライン旅行サイトに対する航空券販売手数料を打ち切っており、今後、オンライン旅行市場シェア争いはさらに激しくなりそうだ。Travelocity.comやExpediaも負けてはおらず、売上全体に占める航空券の割合の削減に努めている。もちろん、両社とも、親会社はSabreやUSAネットワークス、マイクロソフトという大企業であり、航空会社を迎え撃つだけの体力はある。

→続きは、有元の新著『強い会社の儲かるしくみ』(仮題)をご参照ください。

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