「PayPal?」−新世代の決済システム−
グローバルリンクで勤務する前のこと。サンフランシスコから南カリフォルニアに引っ越すことになり、ウエブでアパート探しをした。個人経営の小さなウェブサイトから貸し手を紹介してもらうことになったが、「仲介手数料はPayPalでの支払いのみ受け付ける」という。
「PayPal?」--聞いたことのない名前だった。銀行口座番号など必要な個人情報をPayPalのサイトで登録すると、先方への支払いはPayPalが行ない、同時に私の口座から同額が引き落とされるというのだ。
オンラインショッピングに慣れない私は戸惑った。「得体の知れない第三者に個人情報を教えてよいものか?個人情報とお金だけ盗まれてしまうのではないか?」 しかし、PayPalを利用しないかぎり、私のほしい物件は手に入らない。
登録を済ませるとすぐに、私のアカウント情報がEメールで送られてきた。次に「決済が行なわれました」という内容のEメールが確認番号と共に送られ、しばらくして支払先である物件紹介サイトから手数料受理のeメールが届いた。バーチャルの支払は無事に完了したのである。
グローバルリンクで働くようになって、PayPalが、今、非常にホットなオンライン決済方法であることを知った。PayPalとはスモールビジネス、ネット販売業者、個人を中心に、オンライン上(携帯電話含む)で安全に、便利に、効率よく、かつリアルタイムで支払・入金を可能にする理想的なソリューションを顧客に提供しているのだ。ユーザー数は、ビジネスアカウントを含め、アメリカを含む世界37カ国に1100万人以上。PayPalによる決済を受け入れるネット販売業者は1万店以上にのぼる。もともとeBayでオークション決済に利用され、一挙に広がったのだが、今も、eBayでもっとも人気のある決済方法だ。
個人ユーザーの場合、手数料は一切かからない。PayPalのアカウントの残高に対しては利子もつく。ネット販売業者では、PayPalが用意する支払ボタンを掲載するだけでよく、ショッピングカートも必要ない。ゆくゆくは未だオフライン決済が中心の医療費などもオンラインで簡単に済ませることができるという。
こうした支払方法のメリットは、決済に数日かかる小切手に比べて瞬時に決済ができる、クレジットカードの決済手数料を支払う必要がない、などがあるが、それ以外にセキュリティ面でのメリットも大きい。ユーザーはオンラインでクレジットカード番号を入力する必要はなく、PayPalのボタンを押し、パスワードを入力するだけで支払が完了するのだ。さらに、PayPalでは、PayPalからの承認のない現金引き落としに対し、最高10万ドルまで保険を無料で提供している。
PayPalに限らず、実際に会って取引をしないからこそ、信頼を裏切らず顧客の期待以上に応えるために、品質管理からアフターサービスまで最高のサービスを提供しようと努力しているネット販売業者は他にもたくさんある。PayPalでの体験は、オンラインショッピングとの上手な付き合い方を考えるよいきっかけを与えてくれた。
(金子)
→PayPalについては、有元の新著『強い会社の儲かるしくみ』(仮題)で詳しく紹介されます。
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