FC化するアメリカのスモールビジネス

 最近のアメリカの傾向に、スモールビジネスのフランチャイズ(FC)化、より大規模な事業展開がある。比較的低コストでできるFC展開は、財的・人的資源が限られたスモールビジネスにとって、有効な事業拡大手段として利用されている。州ごとにFCの許可を取得するには費用がかかりすぎるというスモールビジネスには、別の方法で事業拡大を行なっているところもある。

スモールビジネス仲介業 http://www.sunbeltnetwork.com

  アメリカにある1700万の(株式非公開)ビジネスのうち2割が一度は売りに出されると言われる。そうしたビジネスの売買を仲介するのがビジネスブローカー。サンベルトでは、売上100万ドル以下、従業員20人以下のスモールビジネスを対象としたビジネス売買仲介業をFC化した。

 同社が主に対象とするのは、自動車修理工場、旅行代理店、花屋、美容院、バーなどの小売業で、売り値はほとんどが10万ドル以下。ブローカーたちは、こうしたスモールビジネスにとって大変な作業である買い手探し、価格設定、交渉、法的手続き、ファイナンス手続きなどを引き受ける。売買が成立すれば、ブローカーは売却額の10%、最低料金1万ドルを受け取る。

 買い手の多くが脱サラ組や海外からの移民。物件の9割は売り手がローンを提供。たとえば、10万ドル相当のビジネスの場合、頭金4万ドルで、残りは金利6〜7%の5年払いというように、買い手は購入時に頭金を支払い、残りは売り手に月々の支払いを行なう。

 会社創業から14年後にFC展開を始めた同社では、社員わずか7人で、海外を含め130の加盟店を管理。各FC加盟店では、ブローカーを1〜4人雇っており、平均的FC加盟店の売上は400万ドル、手数料にすれば30〜40万ドルだ。

 FC加盟店は、全米および海外加盟店が扱う約2000件の物件が掲載されたサンベルトネットワークデータベースシステムを利用することもできる。インターネットアクセスさえあれば、買い手や取引状況に関する最新情報が常時入手可能というわけだ。現在、ウエブサイトに物件を載せているのは加盟店の4割だが、近いうちに全加盟店をネットワーク化する予定だ。


釣り狩猟専門旅行サービス http://www.outdoor-connection.com

  全米で唯一の釣りと狩猟を専門としたFCを展開しているアウトドアコネクションでは、北はアラスカ、カナダから南はメキシコ、コスタリカまで、100軒以上のロッジやリゾート地と提携し、個人客だけでなく、企業の研修や接待、会議向けに、釣りと狩猟旅行の手配をする。そのほか、各滞在地に応じ、釣りや狩りに関するコツ、持参すべきギアや衣服などのアドバイスも行なう。

 10年前に創業した同社は、初めの一年間は夫婦で在宅ベースで運営。宣伝のため見本市に行くたびに「趣味と実益を兼ねられるこのビジネスを始めたい」という問い合わせを受け、FC化を決意。現在、FC加盟店は100店以上にのぼり、そのほとんどがパートタイムの在宅ビジネスだ。職業は、会計士、営業マン、ウエイター、(定年)退 職者などさまざま。各分野での人脈が顧客開拓につながるため、FC加盟店には仕事は辞めないことを勧めている。加盟店になるための最大の条件は釣りや狩猟が好きであること。フランチャイズ料は5800ドル。

 アラスカには日本やヨーロッパからの釣り客が多く、ドイツ人客専門のロッジなどもある。海外でのニーズに応じ、今後、日本、ヨーロッパ、南米などにマスターフランチャイズを販売していく予定である。

カード作成送付代行サービス http://www.cardsenders.com

  アメリカでは誕生日や冠婚葬祭にはカードを送るのが通例。カードセンダーズでは、企業・事業主に代わり、バースデーカードやクリスマスカードなどを顧客や従業員に送付するサービスを行っている。

 13年前、いとこ同士の女性2人が在宅でパートタイムで開始。主に医師をターゲットにし、患者に手書きのカードを送付していたが、手書きでの限界を感じた2人は、ソフト開発会社にソフトの開発を依頼。このソフトの特徴は、大手DM会社などが扱わない誕生日や記念日などの日にち限定の大規模なメーリングに対応しているところで、アメリカでも他にないという。

 大きくなりすぎたビジネスをもて余していた2人からビジネスを購入した現経営者は、FCではコストがかかりすぎるため、ソフトをライセンスし、ライセンシーに事業方法の研修を行なう方法を選んだ。ラインセンシーの数は、現在、アメリカ40州とカナダに140。ライセンシーは独立した事業主で、さまざまな名前でカード送付事業を営んでいる。ライセンス料は、個別、グループ形式など研修の形態によって、ソフト込みで6900〜8500ドル。このほか、コンピューターなどの機器の購入を含め、立ち上げには計1万ドルが必要だ。


マタニティ服レンタル業  http://www.maternityleasing.com

  プロフェッショナル・エクスペクテーションは、オフィスウエアを中心に、ドレス、スーツ、カジュアルウエア、水着など妊娠中に必要なワードローブがすべてそろうマタニティ服のリース店だ。職場に着ていけるような実用的なマタニティ服がないことを不満に思っていた女性が、会社勤めをし、3人の幼児を育てながら創業。

 同店にはリースとレンタルの2つのプログラムがあり、リースは、一般に4週間単位で、月に一着25〜35ドル。1ヶ月に少なくとも3〜4着は必要なので、たいていの女性が月に100ドルほど費やすが、購入に比べればコスト効果的だ。レンタルの方は、パーティー、結婚式、卒業式、同窓会、葬式などの特別行事用で一着35〜50ドル。一般に金曜日に借りて月曜に返却する仕組みだ。

 同店には、マタニティ服リース業を始めたいという全米の女性から問い合わせの電話が寄せられ、これまで、ボストンやナッシュビルで起業した女性を無料でサポートしてきたが、これをシステム化し、有料とすることにした。コンサルティングという形で、運営マニュアル、マーケティングプラン、仕入れのアドバイスなどの基本パッケージを販売し、マタニティドレスのリースビジネスを各地に広げている。

 運営マニュアル、マーケティングプラン、3年間の収支予測、カンザス店での運営見学、仕入れのアドバイスを含めた卸市場の下見からなる基本パッケージが数千ドル。その後もアドバイスが必要であれば、一時間あたりのコンサルティング料を徴収する。

 こうした形であれば、個人経営でも大きな展開ができる。


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