<アメリカ西海岸便り>

食事は無料で車は乗り放題
自動車ショーは大人の遊園地


 先週の週末、GMが近くの海兵隊基地で自動車ショーを行なった。スポーツカーからトラックまでいろいろな車をテストドライブでき、食べ物も無料で、おまけにセールスマンはいないというではないか。

 周りのアメリカ人の友人を誘ったが、GMというと、皆、「私はトヨタかホンダしか乗らないから」とか、「GM?!GMなんて口にするな。あんなのは田舎っぺが乗るものだ」という返事が返ってきた。私はレンタカーを借りるときに、よくビューイックを借りるが、とくにル・セイバーやリーガルなどは気に入っている(いずれもGMの車)。唯一「タダで食糧にありつけるなら行く」と言っていたジムは、突然の出張で、行けなくなってしまった。

 仕方なくひとりで参加した私。当日、会場に着くなり、レクサス、インフィニティ、ベンツ、BMWなど、GM以外の車もテストドライブできることを知り、大喜び。しかし、まずは腹ごしらえと、カフェテリアへ。どうせ出てもオードブルとたかをくくっていたが、実際はサイドディッシュもついたフルディッシュだった。ハンバーガー、チキン、メキシコ料理、デザートの4つのブースに分かれ、飲み物も炭酸類からレモネード、コーヒーまでそろっている。

 会場は、GMの電気自動車EV1とミニバンのコース1、大型・高級車のコース2、スポーツユーティリティのコース3、中型車のコース4、トラックのコース5、小型車・スポーツカーのコース6に別れていた。近いうちにスポーツユーティリティ(SUV)を買おうと思っている私は、真っ先にコース3に。まず、ときどき街で見かけるレクサスRX300 4x4に乗りたかったが、列が長いので、待っている人のいないいすゞのトゥルーパーを試運転。最近、アメリカではSUVが大流行。ベンツやレクサスまでSUVを出している。

 次にトヨタのRAV4を試す。RAV4は車内が狭いということで、消費者の評価はイマイチだ。ホンダのCR-Vの方が人気がある。(アメリカでは、トヨタよりもホンダが圧倒的に人気がある。)しかし、RAV4に乗ってみるとなかなかいい。コースには障害物もあるが、それも問題なく乗り越えた。最後に、20分ほど並んで、レクサスRX300を試乗。思ったより室内も狭く、パワーもないようで、ガッカリ。

 次にミニバンを試すために、コース1に向かい、日産のクエストを運転。アメリカは、いま、ミニバンも大人気。普通の乗用車を運転するのと同じ感覚で運転でき、乗り心地も悪くない。電気自動車にも乗りたかったが、すごい列で、優に1時間待ちなのであきらめた。

 そこで、大型・高級車のコース2に向かう。やはりベンツとBMWの列は長すぎるので、まずは比較的待人数の少ないインフィニティ I30に。そして30分ほど並んでレクサス ES300を試す。

 昼間になると人も増え、列も長くなってきた。周りの人たちの話では、コルベットなどは待ち時間1時間以上らしい。待つのも疲れてきたので、最後に中型車に乗って帰ることにした。

 コース4は列がいちばん短かった。BMWでも大した列ではないので待つことに。BMWを運転するのははじめてだったが、気に入った。マツダの626、日産マキシマ GLE、フォードトーラスは、待ち時間なしで乗れた。

 帰りにカフェテリアでメキシコ料理でも食べて帰ろうかと思ったら、ちょうど昼食時で、コルベットの列なんかよりもすごい行列。あきらめて帰路についたが、十分満足。

 会場は、まさに大人の遊園地だった。乗り物は無料で乗り放題。食事は無料だし、各コースのテントには無料で水とレモネードも置かれている。こんな遊園地なら毎週来たいものだ。

 結局、3時間で10台の車を試乗運転したが、GMの車は一台も試さなかった。各車を試乗するときには、係員が、名前のついた胸のバッジをスキャンしていた。これは、非常に価値の高いマーケティング情報だが、GMの車にはまったく興味のないことが明白なこの消費者に、GMから営業攻勢がかけられませんように…



有元美津世/N・O誌1998年12月号掲載  Copyright GloalLINK 1997-1998

Revised 1/1/99

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