<アメリカ西海岸便り>

白髪に悩む日米の中年
悩みは同じだが髪質には差が


 今日、友人ケイトの近所の人が開くエイボンパーティに、数合わせのために誘われた。主催者のマリーは、最近、大学を卒業し、勤め始めたところ。サイドビジネスでエイボンレディをやっているらしい。  マリーの家に着くと、すでに彼女の友人や近所の女性、4人がそろっていた。テーブルには、飲み物やドーナツ、クッキー、マリーが焼いたケーキが並び、化粧品があたるくじ引きも用意されていた。エイボンパーティーの準備も大変なのだ、と初めて出席する私は感心。

 商品は見本のみで、カタログを見ながら注文し、1週間後にマリーが届けてくれるという仕組み。カタログにはすでにクリスマスギフトがたくさん載っていた。一緒に行った友人アナは、昔、お母さんがエイボンレディをしていたため、エイボン製品は使い慣れている。ケイトは、バービーマニアの同僚(47才の女性!)へのプレゼントに、バービーのキャラクター入り化粧品を申し込んだ。

 カタログには、紫色やオレンジ色の髪の毛用マニキュアがあり、それを見つけた40代のグループの話題は白髪染めへと発展。ケイトは2週間前に80数ドルをかけて髪の毛を染めたのだが、すでにこめかみのところが白くなっており、美容院に、染めを維持するには毎月55ドルかかるといわれて憤慨している。ケイトは、ウエイトレス、建設現場の仕事、コミッション制の訪問販売と、3つの仕事をかけもちをしているが、経済的に余裕がない。黒髪のアナも、最近、同僚たちに「髪の毛、ひどいよ。何とかしたら」と言われ、染め始めた。私もいつも「マリアも若く見えるけど、やっぱり年やな。最近、白髪が目立つ」とは思っていたが、面と向かって「白髪染めたら?」という勇気はなかった。

 ちょうど昨日、こちらに住む日本人の友人からも、白髪が目立つようになったのでヘアダイとマニキュアをしたら、200ドルもかかったという話を聞いたところだった。年を重ねるといろいろ出費がかさむものだ。彼女もアメリカ人の友人に「白髪増えたね」と言われたのをきっかけに、髪を染める決心をした。そう言えば、この間、日本に帰ったときも、大阪の友人がヘアダイをした。デザイン会社を経営する彼女。「商談をしていると、どうしてもお客さんの視線が白髪に行くんよ」というのがその理由。日本でもアメリカでも、中年期を迎える年代の悩みは同じようだ。

まだ白髪には悩まされていない30代後半の私だが、髪の毛にまつわる悩みはつきない。白人社会に住んでいると、アジア系の髪を扱える美容師を見つけるのが大変なのだ。カリフォルニアの場合、まだ日本人やアジア系の美容師がいるからいい。以前、他の州に住んでいた頃は、いろいろひどい目にあった。私は、長年、ボブスタイルにしていたが、ボブの場合、髪の毛のすそがまっすぐそろってないとよく目立つ。美容師に「左と右の長さが違うけど」などと言おうものなら、「アンタ、うるさいね」とか、「切っている間に、首を曲げたでしょ」などと反対に怒られてしまうのだ。そう言えば、ブローは頼まないとやってくれず、濡れたままの髪の毛で帰された美容院もあったっけ。

 それに、アジア系でない美容師には、ほとんど必ず「すごく髪の毛が多いね」と言われる。高校時代には「薄毛」と言われていた私、日本人としては平均的な量だと思うのだが…アリゾナにいた頃、ある日本人男性は、「髪の毛が多すぎる」という理由で特別料金を上乗せされていた。

 白人の髪の毛は細いので、たとえ本数は同じでもボリュームが小さい。カリフォルニアのある日本人美容師は、9年間、白人の髪の毛を切った経験をもとに、アジア系の髪の毛を切る方が断然むずかしいと結論づけている。

 さて、先のエイボンパーティー。帰り際に、ただ一人何も注文しなかった私も含め、おみやげとして全員に化粧品サンプルの入った袋が配られた。化粧品のサンプルは使わないので誰かにあげるとしても、シャンプーとリンスくらいは自分で使えそうだと思って取り出すと、「白髪またはブロンド用」とあった。



有元美津世/N・O誌1998年11月号掲載  Copyright GloalLINK 1997-1998

Revised 12/1/98

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