<アメリカ西海岸便り>
アメリカにはもはやサービスは不在か?
先日、ミシガンに引っ越した友人が興奮気味で電話をしてきた。引越し荷物が予定日になっても着かないという。いつになったら着くのか引越業者に聞いても、わからない。予定より遅れるだけでなく、積み残しまであるらしい。結局、荷物は3日遅れて着いたらしいが、積み残しの荷物はまだ届いてない。引っ越し屋には、私もひどい目にあったことがある。いつも自分で荷物を運搬したり、友人をかき集めてトラックを借りて自力で引っ越しをしてきたが、2年前にはじめて業者に頼んだ。
引っ越し当日、約束の時間がきても誰も現われない。業者に電話をすると、もうすぐ着くはずだというばかり。結局、現われたのは約束の時間から4時間後。先方の対応に業を煮やした私は、すでに他の業者に頼んでいた。突然頼んだのにきてくれたその業者を最初はありがたいと思ったが、甘かった。二人の作業員のうち一人はほとんど仕事をしないのだ。たとえば、ソファーのクッションをひとつずつ運んだりする。細かい荷物はすでに自分で転居先に運び、残っているのは家具などの大きいものだけだったが、それでもトラックに積むだけで2時間もかかった。時給で払っているから、ノロノロされてはたまらない。転居先に着いてからは、見るに見かねて、自分で運び出した。なんでお金を出して雇っている引っ越し屋を私が手伝わなければならないのか!
その2.今年1月に、ある雑誌の講読を申し込んだが、出版社のミスで購読料がクレジットカードから二重に引き落とされていた。訂正してもらうために、過去7ヶ月間、何度も電話をしているのだが、いつも「返金手続きを取りますが、4−6週間かかります」という返事が返ってきた。とうとう堪忍袋の緒が切れた私は、6月に電話に出た顧客サービス係にファックスでこれまでのやりとりの証拠書類をすべて送った。「すぐに処理をする」という返事だったが、翌月のクレジットカードの明細にはまだ返金が記入されていなかった。再度、顧客サービス係に連絡をし、「すぐに返金されない場合は、ただちに購読をキャンセルする」という手紙とともに、証拠書類をすべてファックス。担当者は「数ヶ月前に小切手で返金しているはずだ」と言い張るため、こちらは小切手を換金していないという証拠書類をそろえなければならない羽目に。やっと先方も記録を調べ、数日後、返金はされていないということが判明した。自分たちのミスが判明した後も、謝罪の言葉は一言もなかった。
その3.先月、レンタカーを借りたときのこと。向こうの手違いで予約が入っていなかった。はじめに出てきた顧客サービス係は、言葉づかいも悪く、こちらを責めるばかり。話にならないので主任にかけあった。さすがに主任は顧客対応には長け、自分たちの非を認めたものの、「車が残ってないのでどうしようもない」と言い張る。これ以上言い争っても仕方がないと見た私は「今後、お宅を利用することもない」と告げると、「仕方ないですね」という返事が返ってきた。私が二度と利用しないと宣言したレンタカー会社は、これで2社目だ。
その4.つい先週も、買ったばかりのパンツスーツを着て出張にいったところ、パンツのチャックが壊れた。帰ってすぐにデパートに返品に行ったが、「他の支店で買ったものだから、当店では受け付けられない」と言う。買った支店に電話をしたところ、「どの支店でも受け付けます」と言うではないか。私は、このデパートでは2度と買物をしないと誓った。このまま行くと、最後には利用できるレンタカー会社も、出版社も、デパートもなくなってしまう。
サービス業者などが、自分がミスをしても認めない、謝らない、責任転嫁をする、というのにはアメリカに来てまもなく慣れた。しかし、サービスの低下は、この5〜6年ほどでより顕著になった。周りのアメリカ人たちも「サービスはもはや得られなくなった。企業が若い人たちにサービスというものを教えていないからだ」と嘆いている。元々サービスなどない環境で育てば、それが普通だと思うだろう。そうした若者にサービスを求めるほうが理不尽なのかもしれないが、このまま行くとどうなるのかが恐い・・・・・。
有元美津世/N・O誌1998年10月号掲載 Copyright GloalLINK 1997-1998Revised 11/5/98
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