<アメリカ西海岸便り>
アメリカのデート産業
先日、一風変わったDMを受け取った。 会員制恋人紹介サービスからだったが、友人知人を紹介し、その人が会員になれば、紹介料をくれるというのだ。恋人紹介サービスのDMは、しょっちゅう送られて来るが、紹介料を支払うというのは変わっている。
シングルの数が720万人にのぼるといわれるアメリカでは、デート産業は一大産業に発達している。私の住む南カリフォルニアだけでも、91の恋人紹介サービス業者が存在するといわれる。
そのため、競争は激しく、各社は、会員を集めるために、様々な工夫をこらしている。
自分の好みにあった会員の写真入りリストが定期的に送られてくるもの、めぼしい候補者のビデオを見て、気に入ったらデートをするもの、毎月、パーティーなどのイベントを催し、会員やゲストを引き合わせるものなど様々だ。
変わったところでは、多忙なビジネスパーソンのために、ランチタイムにデートをアレンジするサービス。ランチタイムであれば、仕事に戻る時間がくれば、いやな相手からでもうまく逃げられるので好都合というわけだ。
シカゴにある「ジャスト・ランチ」という会社では、6000人の会員を抱え、昨年の売上は250万ドル(約2.5億円)、利益は40万ドル(約4000万円)にのぼった。現在では、シカゴ以外に、ニューヨーク、ワシントンDC,フィラデルフィア、ダラス、インディアナポリスの計6都市に進出しており、今年は新たに4都市に進出する予定だそうだ。
自分自身、彼氏探しに苦労していたときに、このビジネスを思いついたという同社社長の年収は、18万ドル(約1800万円)。おまけに、会員の申込にきた弁護士と2年前に結婚までしてしまったということだ。
同じくシカゴには、お客に恋人を紹介するというタクシーの運転手がいる。お客は、目的地に着くまでの間に、車の中で会員の写真やデータを閲覧することができる。「うちの息子に結婚相手を見つけてくれたら、1000ドル支払う」という女性客も現れたそうだ。
また、2年前には、ニューヨー州のある町が、8万人の住人のために、恋人紹介サービスを始めるというので話題になった。
私の住む南カリフォルニアのオレンジ郡では、アラスカまで恋人を探しに行く独身女性のツアーがある。
オレンジ郡では、15才以上の独身女性(離婚、別居、死別を含む)の数が、独身男性の2倍にのぼり、10万人も多い。(その上、かなりの数の独身男性がゲイである。)反対にアラスカでは、独身男性の数が女性を8000人上回る。
このツアーを企画した女性も、もともと自分が彼氏を探していたときに、アラスカに遊びに行くことを思いつき、結局、ビジネスにしてしまったのだ。
私の周りにも30代、40代で彼氏や結婚相手を必死で探しているアメリカ人女性たちがたくさんいる。友人のマーゴは39才。過去10年近く、特定の彼氏がいない。これまでいろいろな恋人紹介サービスに加入したが、知り合う男は、ろくでもないのばかり。一人の女性と誠実なつきあいをしようなどという者はいない。
現在、スポーツを中心としたシングルズ・クラブや教会のシングルズ・クラブに加入しているが、気に入った相手には巡りあえていない。
マーゴは見かけは悪くないし、性格もよく、学歴も高く、大企業に勤めて安定した収入を得ている。なぜ、彼氏ができないのか不思議だが、南カリフォルニアには、年齢にかかわらず、こうした女性がゴロゴロいるのだ。
独身男女の数がアンバランスなため、男性側からすれば、女ははいて捨てるほどいる。いい気になって、複数の女性とつきあったり、女性をゴミのように扱う輩が多い。女は捨てられるのを恐れて虐待にも耐える。男は余計図にのる--という悪循環が引き起こされる。
元々、独身男性の数が少ないところに、その質が恐ろしく悪いため、独身女性の悩みは深刻である。(私は、今まで住んだ中で、南カリフォルニアの男が最低だと思う。)
恋人紹介サービスが多様化する中、もっともオーソドックスなパーソナル・アドと呼ばれる新聞の恋人募集広告も未だ“健在”である。パーソナル・アドの場合、日本でいえばQ2にあたる900番に電話をし、気に入った相手のボイスメールにメッセージを残す。
コンピューターやインターネットの普及にともない、パーソナル・アドの電子化も進んでいる。パソコン通信やインターネット上では、シングルズコーナーが大流行だ。電話の900番のように料金はかからないし、実際に会う前に電子メールを交換して相手の人柄を確かめられるという利点がある。
それに何といっても、インターネットのパーソナル・アドを用いれば、どこにいようが、世界中で恋人探しができる。恋愛・結婚も、まさに、ボーダレス時代というわけだ。「南カリフォルニアにはろくな男がいない」「日本で女性と知り合うチャンスがない」という人には朗報かも...
有元美津世/N・O誌1996年11月号掲載 Copyright GloalLINK 1996
Revised 11/18/96 ma アメリカ西海岸便りインデックスへ