<アメリカ西海岸便り>
マルチメディア履歴書も登場
--インターネット就職活用法
今月発売された拙著「英文履歴書の書き方」(ジャパン・タイムズ刊)執筆の際に 、アメリカの就職市場について調査したが、インターネットは、就職市場にも大変革 をもたらしているようだ。日本でも、企業が自社のホームページに求人広告を載せるのは一般化しているが、 アメリカでは求職者の履歴書や求人情報を貯えたジョブ・データバンクが幅広く利用 されている。アメリカでは、現在、3000以上のエグゼキュティブ・サーチや人材斡旋 会社などが、インターネット上に進出し、ネット上に掲載されている求人広告は何十 万にものぼると言われる。
インターネットを利用すれば、日本にいようが、アメリカにいようが、世界中の求 人情報が検索できるわけだ。現在、ネット上で掲載されているのはアメリカの就職情 報が中心だが、日本を含めたアジアや、ヨーロッパ、南米など、一定の地域を専門と したデータバンクも存在する。また、ハイテク、アパレル、医療関連など一定の業界 を専門としたサイトもある。
データバンクの中には、履歴書を登録すれば、自動的に自分の技能や経歴、希望条 件に合った職を探して電子メールで送ってくれたり、履歴書の電子メールのアドレス のところをハイパーリンクにして、企業がすぐに電子メールで連絡できるようにして くれるところもある。
ジョブ・データバンク以外にも、応募先企業の情報を収集したり、業界や労働市場 の動きをモニターするのに、インターネットやパソコンネットは大いに役立つ。 たとえば、コンピュサーブのキャリア・マネージメント・フォーラムでは、「今日 の就職事情」「キャリア・ワークショップ」「履歴書の書き方」「キャリア・マネー ジメント」「面接」「人事ニュース」「給与」「成功談」「職求む」など様々なトピ ックについて、盛んな情報交換が行われている。求職者からの質問に、キャリア・コ ンサルタントや企業の人事担当者が答え、求職者同士の間で成功談や失敗談、求人情 報が分かち合われる。履歴書コーナーには、誰でも履歴書を掲載できる。
アメリカでは、求人の75%が公募されずに埋められると言われ、目指す業界の人々と コネを作り、内部情報を握ることが就職活動の鍵とな る。そのため、フォーラムや ニュースグループ、メーリング・リストは、そうしたネットワーキングに最適の場と いえる。
また、インターネットは、24時間、自分の好きなときにアクセスできるため、昼間 、働いて就職活動ができない人でも利用できるというメリットがある。
インターネットを就職活動にフルに活用したリックの場合、まず労働局のホームペ ージで2005年までの労働市場予測を閲覧。希望するシステム・アナリストが最も成長 する職種のひとつであることを確認した。さらに、ネット上の給与ガイドで、自分が 住んでいる地域のシステム・アナリストの給与の相場を調べる。 次に、リックはコンピューター関連職のデータバンクに自分の履歴書を登録。彼は 、紹介された企業に連絡し、詳細を得る。応募先企業一社から面接通知が電子メールにて届いた。リックは、インタネットを 通じ、応募先企業のホームページはもちろん、同社に関する新聞・雑誌記事にはすべ て目を通し、この企業の社歴から最新ニュースまでを把握した。彼は、運よく、同社 の採用担当者の個人のホームページを発見し、担当者の略歴や趣味に関する情報まで 入手。
さらに、就職関連のニュースグループを覗いて、キャリア・コンサルタントや実際 の企業の人事管理者による面接の心得などのアドバイスをダウンロードして、面接に 備えた。
面接当日、面接に向かう前に、インターネットで応募先企業の最新株価をチェック 。面接では、「御社の株価は、今日4%上昇しましたね」とコメントする。
リックは、帰宅すると同時に、この担当者宛に電子メールで礼状を送付した。
まさに、コンピューターが使えなければ、就職活動さえままならぬ時代がやってき た。
アメリカには、音入り、画像入りのマルチメディアの履歴書をディスケットで送っ た大学生の話もある。担当者は、届いた履歴書のどれよりも先にこれを開いたという 。ディスケットをコンピューターに入れると、「Hire me(雇ってください)とタイプ してください」という指示が画面に現れる。なんと、照会先の人までが、画面に現れ 、応募者を推薦し始めた。このクリエイティブな履歴書は、その会社中で噂となり、 その応募者には、即日、面接の通知が送られた。その大学生は、めでたく、その会社 に就職。就職後も、「あのマルチメディアの履歴書を作った人間」として会社中に知 られる存在になったということだ。
マルチメディアの履歴書が主流を占める日は、そう遠くはないかもしれない。
有元美津世/N・O誌1997年1月号掲載 Copyright GloalLINK 1997
Revised 4/24/97 e-oth アメリカ西海岸便りインデックスへ