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有元美津世のアメリカ西海岸便り
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どこまで許すか従業員のネット私用
解雇が相次ぐアメリカ企業
取引先のアメリカ企業のサーバはダウンすることが多く、メールが送れなくなることがよくある。先日もまた2,3日ダウンしていたので、連絡は電話で行わなければならなかった。
今回、ダウンした理由は、社員の一人が私用で映画をダウンロードしようとして、負荷がかかりすぎたからだという。「そんな社員はクビにすべきだ」と私は部外者であるにもかかわらず図々しくも苦言させてもらったが、回復のためのコストや失われた生産性を考えるとクビにされても仕方がない。
最近アメリカでは、従業員によるインターネットの私用が大きな問題になっている。7月、ダウケミカルは勤務時間中にインターネットを濫用したとして従業員50人を解雇、200人を口頭での注意から4週間無給に至る懲戒処分とした。同社は工場で働く一従業員の苦情を受け、1週間分のメールをチェックしたところ、ハードコアのポルノや暴力的な電子メールが送付および保存されているのが判明した。会社の電子メール利用規約に違反した従業員はあらゆる職級の従業員に及んだという。
ダウ以外にも、これまでゼロックスやニューヨークタイムズなど多くの企業が、従業員によるインターネット濫用に対し、従業員解雇に踏み切っている。
99年、アメリカ企業は、従業員の私的ネットサーフィンによって53億ドルの生産性を喪失したといわれている。特にポルノや人種差別的な内容は、放っておけば他の従業員からセクハラや人種差別として訴えられるリスクがあるため、企業側はこの問題に敏感だ。
アメリカでは企業の4分の3が何らかの形でメールやネットのモニターを行っているといわれている。ある調査によると、8割以上の企業がインターネット利用に関する規約を書面で設けており、3分の2近くが濫用に対し何らかの処分を行った。プライバシーの侵害だとして従業員が企業を訴えるケースもあるが、企業には所有するコンピューターをモニターする権利があるという判決が出ており、従業員が勝訴した例はないようだ。
従業員によるネット濫用を取り締まるソフトウエアも各種発売されている。従業員のインターネット管理市場は99年6300万ドルだったが、2004年までには5億6200万ドルにのぼると予想されており、一大市場を成している。
こうしたソフトは、ポルノやギャンブルサイトなどへのアクセスをブロックしたり、従業員が訪れたサイトをすべて記録したりする。昨年、40人を解雇したゼロックスでは、こうしたソフトによって違反者を発見した。彼らの多くがショッピングサイトやポルノサイトにアクセスしていたのだが、一日8時間もそうしたサイトにアクセスしていた従業員もいるという。
従業員4人のある企業では、そうしたソフトをインストールして10分以内にポルノサイトの4ページビューが検出されたという。従業員1200人の企業では、5日のうちにオンラインショッピング3000件、株売買4000件、ポルノサイト閲覧500件が検出された。違反者は、平社員のみならず、なんとCEOにまで及んでいた。
職場でアクセスするユーザーの数は家からアクセスするユーザー数の2倍以上だ。一般に職場の方が高速通信の利用でアクセススピードが速いからだ。
ネットサーフィンをする男性は女性の倍で、ポルノをダウンロードするのは男性が女性の20倍だそうだ。それも、年収7万5000〜10万ドルの高収入層の方が3万5000ドル未満の収入層よりもポルノをダウンロードする割合が高いという。またポルノサイトへのアクセスの70%が平日9時〜5時の間に行われるというデータもある。
オンラインショッピングもほとんどが午前11時から午後3時の間に行われるという。私もオンラインオークションでクルーズ旅行を競り落としたことがあるが、オークションの締め切りは毎日午後12時半。毎日締め切り前後に入札合戦が一番激しくなる。クルーズに行くのはリタイアした人たちが多いが、入札する人たちのすべてがリタイアした人ではないだろう。この人たちは一体どんな仕事をしているのだろうかと不思議に思ったものだ。職場からアクセスする人も多いのだろう。
親が子供のインターネット利用を規制できるソフトもたくさんあるが、取り締まらなければならないのは子供だけではないようだ。
有元美津世/N・O誌2000年10月号掲載 Copyright GloalLINK 1997-2000
Revised 11/1/2000
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