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有元美津世のアメリカ西海岸便り
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アメリカに「なすび」のインターネット版登場
さて1年間インターネットだけで暮らせるか?
日本では、昨年、懸賞だけで家にこもって1年暮らすという電波少年のなすびが人気を呼んだ。アメリカでは、そのインターネット版、ドット・コム・ガイが話題を呼んでいる。
ドット・コム・ガイ(DCG)は、2000年1月1日より1年間、家から一歩も出ずにすべてをインターネットでまかない過ごすというものだ。その様子は、家中に取りつけられた26台のカメラを通じ、1日24時間毎日www.dotcomguy.comでウエブキャストで放映されている。(今、見たところ、DCGは就寝中だった。)
DCGは26歳。海兵隊に入隊後、大手小荷物配送業のUPSで3年間働き、その後、大手ワイヤレス電話会社でシステムマネージャーを勤めていた。親には「仕事は辞めない方がいい」と言われたそうだが、この企画のために仕事まで辞めてしまった。家族をマスコミから守るため、かつ自分個人ではなく、EC啓蒙というコンセプトに焦点をあてるという理由で、名前まで法的にドット・コム・ガイに変えてしまった。
DCGは、1年ほど前からこの企画を暖めていたが、3人の兄弟から「そんなことできるわけがない」と笑われ、当時のルームメートには頭がおかしいと思われたらしい。周りから「できるというなら証明してみろ」と言われたDCGは、中学時代の友人に相談。2人は資金を出し合い、ドット・コム・ガイ株式会社を設立した。
そう、これは、れっきとしたビジネスなのである。現在、オンラインスーパーのピーポッド、大手小荷物宅配業者のUPSなど7社がスポンサー企業となっている。
2人はこの企画にふさわしい家をダラスに見つけ、DCGは今年元旦に何もない家に移り住んだ。まずはゲートウエィからコンピューターを調達。それをインターネットにつないで、まずオンラインで注文したのがトイレットペーパーと食料品。その後、食事宅配サービスでピザロール100個を注文、インターネット銀行に口座を開設した。ケーブル、HDTV、衛星放送、携帯電話、インテリアデザイナー、改装業者、家具、衣服、その他もろもろをすべてオンラインで注文。現在、家を改装中である。
ウエブサイトでは、DCGが何をオンラインで購入したかや日々のスケジュール、日記などが閲覧でき、DCGにメールも送れる。DCGとのチャットルームも設けていたが、現在は閉鎖され、掲示板として再オープンするようだ。もちろん、それにはユーザー登録が必要で、ユーザー情報は広告主、スポンサーの獲得に利用される。
「毎日、家で何をしているのか」と疑問を抱く人も多いはず。実は、DCGは結構忙しい日々を送っているのだ。毎日のようにミーティング、TVや雑誌の取材、スポンサー主催のネットイベントが入っている。また視聴者から届く電子メールに返信も送らなければならず、仕事に追われる毎日だ。(日本のTV局などの取材もあり、テレビ東京の取材班はDCGの家で週末を過ごしていったらしい。)
DCGには給料が支払われ、給料は毎月倍増していく仕組み。1月は24ドル、2月は48ドル、3月は96ドル、12月には49,152ドル支払われ、年収は98,280ドルにのぼる。1年間自宅から離れず、これだけの給料がもらえれば悪くない。
なすびの状況と大きく違うのは、DCGは家を出られないが、お客を呼んでパーティーなどはしてもよいという点だ。土曜の夜には、バンドを呼んで演奏をしたり、カジノを開いたり、数々のイベントが行なわれる。
また、自宅でならばデートをしてもかまわない。バレンタインデーには、やはりオンラインで見つけた相手と、食事を宅配してもらい、生バンドつきで、自宅でデートをした。エクササイズ器具もスポンサーによって寄贈され、DCGはパーソナルトレーナーのもと、週に3回自宅で運動をしている。視聴者はプログラムの成果をオンラインで見守ることができる。
DCGには、なすびのような悲壮感はない。これは、DCGが自ら企画したものだからか、6畳一間のなすびと違い、DCGは大きな家に住み、毎週メイドサービスが来て掃除をし、週末には生バンドつきのパーティーが行なえるからなのか。はたまた、この1年、1000万円近くの収入が得られるからか。日米の文化の違いもあるが、やはりECを世間に啓蒙したいという信念のもと、自らの事業として展開していることが一番の要因だろう。
有元美津世/N・O誌2000年6月号掲載 Copyright GloalLINK 1997-2000
Revised 7/1/2000
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