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有元美津世のアメリカ西海岸便り

無料サービスのオンパレード!
ECサイトで利益がでないワケ


 日本でも昨年から無料インターネット接続サービスが始まったが、アメリカではダイアルアップの無料インターネット接続サービスはもちろんのこと、DSLの無料接続サービスが開始されている。

 DSL(Digital Subscriber Line)とは、既存の電話回線(銅線)を利用した高速通信サービスで、常時接続状態(つまり専用線扱い)で使えるものだ。データ送信と音声通話が同時に行なえるので、新たに電話線を増やすことなく、インターネットをしながら通話ができる。近隣世帯とネットワークを共有するケーブルとは違いセキュリティも高い。

 DSLの速度は、種類によって128kbps〜52Mbps。料金は一般に月50〜60ドルの固定料金だ。ところが、それも無料で提供する業者が出てきたのである。ここオレンジ郡にあるBroadband Digital Groupでは、平均128Kのサービスをうたっている。最高30MBのケーブル接続に比べれば劣るものの、56Kモデムに比べれば倍のスピードだ。

 当然、誰しも思うのが「無料のサービスでどうやって儲けるの?」という点。収入源はターゲット広告配信、つまりユーザーの個人情報を集めることによって個人の属性や好みに応じたターゲット広告を配信するというものだ。

 同社のサービスを利用するには、氏名、住所、電話番号のほかに、現在利用のサービス、コンピューターやOS(基本ソフト)の種類などを入力。同社専用のブラウザを使用しなければならない。ちなみにDSLモデムは購入する必要がある。

 同社のプライバシー規約には、「価値のあるDSLサービスを無料で提供しているのだから、直接的または間接的に集めたあなたの個人情報をあなたの許可なしに第三者に開示または配布する権利を有する」とある。個人情報を売買され、あちらこちらの企業からDMや電話が来てもかまわないという消費者には、価値のあるサービスだろう。

 しかし、こうしたDSLサービス会社が広帯域回線をリースするのに電話会社に支払うコストは1回線あたり10〜20ドル。損益分岐点は、DSLの場合、1ユーザーあたり11ドルといわれている(ちなみにダイアルアップサービスの場合、1ユーザーあたり5ドル)、ビジネスモデルの有効性を疑問視する声は高い。とくに現在は、有料でもDSLに加入したいというユーザーが多く、電話会社のDSL技術者不足から申し込んでも数週間待たされる。そうした高需要の中、「なぜ無料で提供する必要があるのか」ということだ。

 これにとどまらず、インターネット上では、様々なものが無料で提供されている。ウエブベースの電子メールは無料、サーバースペースも無料、ホームページ作成ツールやイントラネットツール、各種ソフトも無料、オンラインストアでは商品の送料は無料、インターネット接続サービスに加入すればコンピューターが無料、最新の音楽も無料でダウンロードできる。オンライン銀行や株式取引サイトでは、口座を開設すれば、50ドル、100ドルを贈呈するといった販促方法が広く使われている。(じつは、私もE*Tradeの口座を開けたときに50ドル頂戴した。)

 インターネット上の無料提供品や割引クーポンを集めた割引ポータルも登場している。そうしたポータルのひとつを運営する学生は、初めての顧客には100ドルを割引するというショッピングモールに38回も登録して、計3800ドルを浮かせたという。38回とも本当の名前と住所を使ったというから、その管理体制には驚きである。こうした大判振舞いとずさんな管理がたたってか、このショッピングモールは、今、破産寸前の経営危機に瀕している。

 私もオフィス用品を買う際には、オンラインで100ドル以上買えば15ドル割引といったオンラインクーポンを利用している。しかし、今、割引ポータルをのぞいたところ、もっとお得なクーポンが山ほどあるではないか。早速、OfficeSupplies.comで100ドル買えば50ドル割引というクーポンを利用した。クーポンはあと3週間有効なので、この3週間の間に1年分のオフィス用品を買い溜めようか……。

 一時、Buy.comに代表されるコスト割れ販売サイトが話題を呼んだ。70ドルで仕入れたものを50ドルで売れば赤字になるのは当然なのだが、インターネット上ではそうしたオフラインの世界では考えられないことが次々に起こっている。利益が出ているECサイトがほとんどないのも無理はないかもしれない。   

有元美津世/N・O誌2000年7月号掲載  Copyright GloalLINK 1997-2000

Revised 8/1/2000

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