集会には弁護士も出席
訴訟も辞さない住民間トラブル
最近、私が住んでいる地域の自治会の役員の間で内紛が起こっている。5人いる役員が2対3で対立しており、そのうち一人には会長の訴えで裁判所から拘束命令も出されており、自治会の集会には弁護士が出席するありさまだ(その弁護士費用は、私たちの共益費から出ている)。集会当日、議題に反対する会長ら役員側から集会が2時間前にキャンセルされるという事態も生じ、反対側からはリコール運動も起こっている。
役員の一人からは何度か手紙が届いた。「役員会は共益費を有益に利用していない。不必要な修理をするなら、カーポートをガレージに造り直したほうがいい」という内容だった。私が住んでいるのは棟続きのタウンハウスで、共有地であるカーポートをガレージに改造するには自治会の承認が必要だ。ガレージがあれば不動産の価値がかなり上がる。しかし、費用を捻出するために月々の共益費が60%増となる。特に年金生活者などには痛い出費だ。
私にとってはガレージよりも、駐車場で遊ぶ子供たちが大きな問題だ。私は週に2回、自宅で仕事をするが、7〜8人の子供が仕事部屋の窓の下で遊ぶため、かなりうるさい。夏休みに入ると、それが1日中続き、暑いのだが窓を閉めざるを得ない。窓を閉めてもうるさいのだが。
第一、自動車がひっきりなしに出入りする駐車場で遊ぶのは、子供たちにとって危険である。車をバックで出すときに、子供が後ろにいないかヒヤヒヤものだ。私が住んでいるところは公園がたくさんあり、小学校も目の前にあるので、遊ぶ場には事欠かない。何も駐車場で遊ぶ必要はないと思うのだが、親は自分の目の届くところで遊ばせたいらしいのだ。
出張から帰って来ると、今度は隣の人からのメモが裏庭に置かれていた。ガレージ建設や駐車場を運動場代わりに使う子供たちについて電話をしてほしいという。すぐ隣だが、とりあえず電話をした。そしてここに20年近く住むという隣人から、役員会の内紛、過去の話、近所の人の噂話を延々一時間聞かされた。
駐車場で遊ぶ子供たちに悩まされているのは私だけではなかった。彼女をはじめとして、子供たちに車を傷つけられた人もいる。自治会の会則でも駐車場で遊ぶことは禁止されており、罰金規定があるのだが、住人にうらまれることを恐れて役員らが適用していないという。自治会に不満がある場合は、管理会社に手紙を書くことになっていて、彼女もこれまで何度も手紙を書いてきたが、それがなぜか“消える“のだという。
私もこれまで何度も手紙を書こうと思っていたのだが、忙しさにかまけて先送りにしてきた。いちばんうるさい悪ガキ2人がいる家庭は、家主ではなく、賃貸者の住人であることも教えてもらった。管理会社、自治会に訴えても埒があかなさそうだったので、私は直接その賃貸家族に手紙を書くことにした。賃貸者であれば会則を知らないかもしれないと、会則の駐車場での遊び禁止、罰金をうたったページをコピーしてハイライトして添付した。その週から子供たちは駐車場で遊ばなくなった。(ただし、うちの横の芝生で遊ぶようになったので、今でもうるさいことには変わりはない。)
翌月の集会当日には、会長の夫から3ページにわたる手紙が届いた。「一部の役員が私利私欲で勝手なことをしている」という予想通りの内容だった。そして「この手紙に書かれているのはウソばかり。信じるな」という隣人のメモが付いていた。
共益費をどう使うかは、ライフスタイルやライフステージの違いなどにも左右される。そもそも全員の賛成を得ること自体が無理なのだ。
自治会の集会では「バカ野郎」の罵声の飛ばし合いはもちろん、裁判沙汰になることも珍しくない。私の友人も、これまで何度も自治会を訴えたことがあるという。
先日、会長自身からこれまで自分がどれだけ住人のためになる活動をしてきたかという自己弁護の書とともに、「役員全員辞任」の通知が届いた。これで住人が新たに役員を選べる。大統領選挙の用に選挙自体が裁判沙汰にならないことを祈るばかりである。
有元美津世/N・O誌2001年2月号掲載 Copyright GloalLINK 1997-2001
Revised 1/3/2001
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