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有元美津世のアメリカ西海岸便り

欠航・遅延は慢性化 どうなる?
米航空会社のサービス


 今週、出張でボストンに行った。いつもはアメリカン航空を利用するのだが、クライアントの都合でユナイテッド航空に乗った。ユナイテッドは、昨年の夏、パイロットのストで何千便というフライトを欠航し、フライトの欠航・遅延史上最悪記録を残した会社である。汚名返上のために、テレビコマーシャルにCEOが自ら登場し、「問題を解決するよう努力します」と誓ったくらいだ。

 同社のウエブサイトには、各フライトの予定どおりに出発する割合が表示されている。私の行きの便は60%、帰りの便は40%だった。

 出発の2日前に航空券を買ったため、料金はなんと2400ドルもした。最近、正規料金は2000ドル以上する区間が多い。ロサンジェルスから東京や大阪には、一番安い時期なら300ドル台、ヨーロッパへも400ドルで行ける。最低2週間前に購入し、かつ土曜日の夜に宿泊しないと、航空運賃は恐ろしく跳ね上がる。

 さて、行きの便は30分遅れですんだが、帰りの便は空港に着くと「欠航」の表示が出ていた。カウンターに行くと、「次の便に乗れ」という。「ここで3時間も待っているわけにはいかないので、オレンジ郡行きの便に変更してくれ」と頼む。係員はぶつぶつ言いながら変更をし、私は出発まで20分しかない便に乗ることになった。

 ゲートに駆けつけ、機内に入り一息ついていると、「ワシントンDCのダレス」に行くというアナウンスが聞こえた。搭乗券を見ると「ダレス経由ロサンジェルス」になっているではないか。急いで飛行機を飛び降り、ゲートの係員に文句を言った。すると30分後に出る便があるので、別のゲートに行けという。そこでまた一から説明して、やっとデンバー経由でオレンジ郡に帰れることになった。欠航したロサンジェルスへの直通便に乗るはずだった乗客が乗り込んだため(乗務員の話では別の欠航便から回ってきた乗客もいたらしい)、機内は満員。2400ドルという信じられない正規航空運賃を払っても、こんな風にしか扱われないのだ。

 私は元々アメリカの航空会社にサービスは期待していない。アジアやヨーロッパ系の航空会社と比べると、その差は歴然だ。しかし、サービスはおろか、予定どおり無事に目的地に着くことすらもかなえられないのだ。

 フライト欠航の理由はたいてい「機械の故障のため」と航空会社はいうが、じつは乗客が少なすぎて飛行機を飛ばせるのを見合わせる場合が多い。以前、ある雑誌の記事で現役パイロットが「航空会社はウソをつきまくる」と書いていたが、その通りなのだろう。

 2400ドルという恐ろしい運賃を支払わない限り、たいていの航空券には制約がついている。そのため、乗客側の都合でフライトを変更すると、変更手数料75ドル+その時点で適用される運賃との差額を支払わされる。航空会社はペナルティなしで自由自在にフライトを欠航できるのに、これは納得がいかない。

 実際、アメリカではフライトの遅れや欠航が慢性状態になっており、時間どおり飛ぶことの方が珍しいとさえいえる。先のユナイテッド便では、スケジュール通り到着するのがさぞ珍しいのか、「オレンジ郡には予定より15分早く着く」と何度も機内アナウンスがあった。日本からの旅行客はアメリカ国内で欠航や遅延に合うと、「たまたま運が悪かった」と思うのだろうが、それは“たまたま”ではなく、日常茶飯事に起きていることを経験したに過ぎないのだ。

 広大なアメリカでは飛行機が出張の“足”となっており、特にビジネス利用者の怒りは頂点に達している。昨年の上半期だけで、運輸省への大手航空会社10社に対する苦情は69%に跳ね上がった。

 最近では航空会社の労使問題でフライトが遅れるケースが多い。ユナイテッドではパイロットだけでなく、メカニックによる作業遅延が行われている。今年に入ってからは、デルタのパイロットが残業飛行を拒否し、欠航便数は3500便以上に達している。航空業界では、組合員が希望を通すために、ストが常套手段として使われてきた。結局、従業員の賃金アップ分を払うのは乗客なのである。

 現在、ユナイテッドはUSエア、アメリカンは倒産したTWAの買収を決め、規制監督当局の承認を待っているところだ。買収が承認されると、ユナイテッドとアメリカンがアメリカ国内市場の50%を牛耳ることになる。航空業界の寡占化はさらに進み、フライトのオプションは減り、運賃はさらに値上がりし、サービスがさらに低下するのは間違いない。
 


有元美津世/N・O誌2001年3月号掲載  Copyright GloalLINK 1997-2001

Revised 1/4/2001

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