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有元美津世のアメリカ西海岸便り

日本だけではない?!
アメリカの携帯依存症


 先月、映画を見に行った際、信じられないことが起こった。映画の最中に携帯電話が鳴り出したのだ。それどころか、携帯の持ち主は電話に出て上映中に話をしているではないか!電話が鳴ったのは1度だけではない。計3回鳴った。電話が鳴るたびに、他の観客は振り返り、横に座っていた人が注意した。しかし、その女性は「アイムソーリー」と言いながら、話を続ける。それほど重要な電話がかかってくるなら、映画など見に来るな!!!

 その女性は10代の若い子ではなく、成人女性だった。

 アメリカでは、日本のように携帯が鳴ったら室外に出るという習慣はなく、レストランでも、セミナーの会場でも、皆、そのまま自分の席で話をする。電車の中でも「携帯電話は迷惑」という概念はないようだ。しかし、映画館で上映中に話をするというのは、さずがアメリカでも許されない。

 映画館の次に驚いたのはトイレだ。通っているジムでトイレに入ったときのこと。隣から話し声が聞こえてくる。用を足しながら電話で話をしているのだ。用を足しながらしないといけない話とは、どれほど大事な話なのだろう。

 最近では、携帯で話をしながら、飛行機を乗り降りしているビジネスマンが目につく。搭乗する人の列が、皆、携帯で話をしているのだ。搭乗券を見せる間も惜しんでしなければならない話とは、どんなに重要な話なのだろう。

 携帯を放せないのは、もちろんビジネスマンだけではない。大学講師をする友人に聞いた話では、授業中も携帯やポケベルが鳴りまくるという。マンモス教室の場合は、同じ教室内で携帯を通じて会話をしている学生らもいるらしい。

 昨夏アラスカを訪れたときには、携帯で恐い思いをした。アンカレッジで知人の家に泊まったのだが、その女性は携帯電話依存症だった。車であちらこちらに連れていってもらったのだが、運転をしている最中に、たばこを吸いながら携帯電話で話をするのだ。運転の方は当然、片手になる。それもタバコを指の間にはさんでだ。おかげでセンターラインをしょっちゅう超える蛇行運転となる。彼女は失業中で、緊急の仕事の電話がかかってくるわけではない。一日に何度も顔を合わす近所の人や友人からの電話なのだ。

 日本でも会議中だろうが、食事中だろうがいつでも携帯に出る人たちがいる。彼らも携帯依存症といえるだろう。

 携帯が大流行りし、活気をなくしたインターネット、IT分野の中で唯一元気があるのがワイヤレス部門だ。アメリカの今年のバズワードは「ワイヤレス」といってもいいだろう。各地でワイヤレス関連の展示会が開かれ、業界雑誌でも最近の特集といえばワイヤレスの記事ばかりだ。

 そうした特集で必ず取り上げられるのがNTTドコモ。アメリカではなかなか火がつかないインターネット対応(データ通信用)携帯だが、日本でのiモードの成功は世界で注目を浴びている。そのiモードがアメリカにも紹介される日は近いが、「日本のサービスをそのまま持ちこんでもアメリカでは成功しない」「日米では文化や社会環境がちがう」「日本でも成功したのは10代の女の子が中心で、エンタテイメント目的だ」と、アメリカではiモードの導入に否定的な見方が多い。

 確かに2年ほど前から、アメリカでもインターネット対応電話は販売されているが、売上が伸びないのだ。私の周りでもインターネット対応電話を持っているアメリカ人はいないし、最新の機器が大好きなおタッキーな技術者の友人らですら、インターネット対応電話を持っている人間は周りにいないという。

 私は、アメリカでインターネット対応電話が普及しない最大の理由は、自動車社会であるため、機器が小型である必要がないという点だと思っている。自動車で移動するのでラップトップを持ち歩くのは苦にならない。小さなスクリーンで小さなボタンと格闘するよりも、ラップトップの方が断然使いやすい。こうした社会環境の違いを超え、iモードがアメリカ人の間で受け入れられるのかどうか、見物である。


有元美津世/N・O誌2001年6月号掲載  Copyright GloalLINK 1997-2001

Revised 1/7/2001

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