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有元美津世のアメリカ西海岸便り

院生は奴隷、女子学生は過激
アメリカ最新大学事情


 南カリフォルニアの州立大学院に在籍していた日本人のAさんが、最近、博士号を取るのをあきらめて、大学院を去った。彼女の場合、すでに40代半ばで、体力的にも精神的にもあと4年がんばる自信がないという理由だった。

 私も大学院在籍中、何人もの博士過程の学生と知り合ったが、その話は悲惨だった。教授のやりたくない仕事を低賃金で押し付けられ、アイデアや研究成果はしょっちゅう教授に盗まれ、まるで教授の“奴隷”だということだった。 また、博士論文委員会は3人の教授に委員になってもらわないといけないのだが、特に主査の教授とうまく行かないと博士号が取れないというのは、日本の大学院とほとんど同じである。

 また、担当教授が、途中で他校に転職してしまったという話もよくある。その場合、別の教授に担当してもらって、その教授に合ったテーマに変えて研究をイチからやり直すか、転職した教授と一緒に別の大学に移らなければならない。

 博士過程開始後、7年間の間に卒業しなければならず、それができずに、途中で辞めていく人も少なくない。

Aさんと同じ文学部の博士過程に中国からの留学生がいたが、彼は天安門事件に関与したため、中国政府に投獄され、2年間刑務所暮らしをした経験がある。彼の話では、なんと北京での刑務所暮らしよりアメリカの大学院生活の方が大変だというではないか。

 別の大学で大学講師をする友人、ロバートにこの話をしたところ、「それはそうだろう」との答え。彼も海洋学で博士号を取るために勉強していたことがあったが、あとは卒業研究だけという時期に離婚をすることになり、断念した。

 ロバートは、すでに水中ビデオの会社を経営していたし、博士号を取ったからといってキャリアの道が開けるわけではない。反対に博士号を取った方が選択肢は狭まるといってよいだろう。

 Aさんの同級生のアメリカ人学生も10年かけて博士号を取ったものの、毎月、履歴書を100通出すが、返事すらこない。彼女は自己破産し学生ローンを踏み倒した。

 Aさんも大学院を辞めて就職活動を開始したが、大学という特別な世界から一般社会に戻り、現実の厳しさに直面していた。初めは事務職やアシスタント職でもよいといっていたが、そういった職種では年収はせいぜい2万5000〜3万ドルほど。月1000ドル以上にのぼる家賃は払っていけない。教授から東海岸の有名私立大学の研究員職を紹介されたが、年収はわずか2万5000ドル。その町にはその大学しかなく、他に楽しみはない。最寄りの都会といえば、車で一時間走らなければならない。それに一年の半分以上が冬である。そうした環境で、年に数人は、大学のビルから飛び降り自殺をするそうだ。

 明るい話題に変えよう。私立大学で海洋学を教えるロバートは、近頃の女子学生は過激だという。講義の間にも熱い視線を送ってきたり、ウィンクしたりするという。挑発的な服装をして、わざと胸が見えるようにしたり、胸を腕に押しつけて来たりする学生もいるそうだ。挙句の果てには、女子学生2人に「3人でやりませんか?」と誘われたという。ロバートは40代半ばで、別に取りたてて見かけがいいというわけではない。多くの男性にとっては“天国”のような世界に聞こえるが、講師と学生の間では、セクハラで訴えられて、職を失いかねない。いくら心が動いても手は出せない。

 別の友人キビは、コミュニティカレッジで非常勤講師を務めるが、女子学生らが「もうバイ(セクシュアル)からは足を洗うことにした」「最近、バイが超トレンディだからね」などと話をしているのを聞いて、仰天したという。「流行でバイセクシュアルになったり、ならなかったりするなんて…」と30代半ばのキビにも、若者の行動は理解できないようだ。ロバートにも「女子学生の間でバイが流行っているってホント?」と聞いてみたところ、「そのとおり」という答えが返ってきた。

 私も、あと20年遅く生まれていたら、大学生活を2倍エンジョイできたかもしれない…


有元美津世/N・O誌2001年7月号掲載  Copyright GloalLINK 1997-2001

Revised 1/8/2001

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