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有元美津世のアメリカ西海岸便り

 

リストラの逆恨みに怯える上司たち


 日本でも、最近、運送会社を解雇された男が元上司に切りつけ、会社に立てこもったり、解雇を逆恨みした清掃員が管理を任されていたビルに放火するといった事件が起きた。元社員が元勤務先に対して暴力事件を起こすケースはここ数年、増加傾向にあるという。

 アメリカでは、もう20年以上も前から、元社員が解雇などの腹いせに勤務先で銃を乱射する事件が多発している。

 80年代後半から90年代にかけては、全米各地の郵便局で局員による銃乱射事件が相次ぎ、「狂気のさたに出る」という意味で「郵便局員になる、郵便局員の真似をする(going postal)」という俗語が生まれたくらいだ。

 その後も、勤務態度が悪く解雇された社員が元勤務先で銃を乱射して同僚6人を殺害したり、無断欠勤が多く謹慎中だった社員が同僚8人を殺傷するといった事件が後を絶たない。

 94年から2003年にかけ、社員対社員の銃撃は4倍以上に増え、96年以降、週に平均22人が職場で殺害されているという。98年以降、職場で殺人事件を起こした犯人の25%が、解雇後、または上司と勤務時間や賃金、昇進などで争いになった後、元上司や同僚を殺害している。

 そうした犯人の多くが白人男性で、30代半ば以上で、勤務年数は長いという傾向がある。性格的には一匹狼で、職場以外に居場所がない。日頃から、自分は職場で誤解されたり、バカにされていると感じており、長い間の恨みが鬱積している。無能な上司によって、昇進できないと感じている場合も多いうという。悪いのはすべて回りで、自分は悪くないという被害者意識が強いのが共通点だ。

 こうした事件が起こる度に、「大人しい人だった」「こんな大それたことをするような人ではなかった」「突然、気がふれた」と回りは語るが、たいていの場合、その前から暴言、悪口、いやがらせ、命令(指示?)不服従といった形で兆候が表れているのだ。長年にわたる私生活での問題やストレスが、解雇された、人事評価が悪かった、昇進できなかったということが引き金となって、殺傷事件を起こす。

 解雇を言い渡す方も命がけだ。元駐在員のJさんは、アメリカで契約社員に契約打ち切りを告げた際、襲われるのではないかという恐怖心を覚えたという。その契約社員は非常に有能だったのだが、仕事熱心が行きすぎ、取引先でよくトラブルを起こしていた。契約期間も終わり、プロジェクトも完了したことから、契約非更新を告げたが、1時間かけて説明しても、なかなか納得しなかったという。

 こうした事件が起きた場合、被害者の遺族が暴力を予知できたのに事前に防がなかったとして会社を訴えるケースが多い。そこで、企業側も予防策に力を入れ始めている。

 社員に解雇や懲戒処分を告げる際には、外線のある部屋で、必ず2人で対応し、解雇通知後には、社員が会社の敷地を出るまで、監視するという企業もある。また、社員にいやがらせをしたり、脅かしたりする相手には、雇用主がその社員に代わって禁止命令を請求できる州も増えている。

 リストラが日常茶飯事となった日本でも、今後こうした事件が増加すると思われる。アメリカでは、職場での暴力を専門にしたコンサルティング業も盛んである。日本でも、早急な対策が必要とされている。

有元美津世「ベンチャーリンク」2005年3月号掲載
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