日本から、12月に米国を訪問し、企業を訪問したり、私をインタビューしたいという問い合わせが相次いだ。日本も師走で忙しいだろうに、なぜこんな時期に、と思うのだが、12月にアメリカを訪問というのは最悪のタイミングである。感謝祭が終わると、アメリカは、もうホリデー気分。皆、クリスマスギフトの買い出しや準備に忙しく、仕事どころではない。次々とクリスマスカードが届き出し、いつもギリギリにカードを出す私などは、あせり出すのだ。
アメリカは、11月の第4木曜は感謝祭(Thanksgiving)で休日。たいていの企業は、翌日の金曜も休みで、4連休となる。感謝祭は、日本のお正月のようなもので、家族が集まる日であるため、遠方の家族を訪れるために1週間ほど休みをとる人も珍しくない。
ちょうど今年の感謝祭の頃、イギリスから友人が遊びに来ていたというアメリカ人の知人は、「彼は感謝祭が何の日かも知らなかった!」と驚いていたが、それもそのはず。感謝祭は、アメリカとカナダ(11月ではなく10月)の祝日だ。1620年、巡礼者らがメイフラワーで新大陸に到着した冬、102人のうち46人が死亡。しかし、翌年は豊作だっため、幸運に感謝するため、お祝いをしたことから始まった。
当時は、カモやガチョウを狩って食べたようだが、今や感謝祭の食物といえば、七面鳥の丸焼き、中の詰め物、マッシュポテト(七面鳥の焼き汁を使ったグレービー付き)、クランベリーソース、パンプキンパイ。七面鳥の調理には時間がかかるので、前の晩から焼き始める人もいる。
感謝祭の翌日の金曜日は、一年でもっとも安いといわれるバーゲンの日。朝の7時から開店する店もある。今年は、ある人気のオモチャを手に入れるために、夜中の1時から並んだという人たちがいた。そのオモチャとは、ファービーというコンピューター仕掛けのインターラクティブのぬいぐるみ。タマゴッチの次を行くバーチャルペットだ。
このペット、ファービッシュという言語をしゃべるらしいが、800語以上のボキャブラリーがあるとか。かまってやればやるほど、いろいろなことを覚え、かまわなくなると、死にはせず、眠ってしまうそうだ。
光や音に、またさわられると反応し、目、耳、口が動き、動作には300以上の組み合わせがある。マニュアルには書かれていない動きもするらしく、それを見つめるのが、また一種の遊びとなっている。
ダンスをしたり、歌をうたったり、かくれんぼなどのゲームまでし、ファービー同士で、くしゃみをさせたり、笑わせたり、ゲームを教えあったりするらしい。
毛や目の色、声にもいろいろな種類があり、白いタマゴッチにプレミアがついたように、グレーの毛でグリーンの目をしたものや白い毛に青い目のものなどが、コレクターズアイテムだとか。
定価は30ドルほどだが、なかなか手に入らないため、インターネット上では1000ドルという破格値も出ているようだ。
さて、皆が狂ったようにバーゲンに向かう感謝祭の翌日。私は、南カリフォルニア最大のショッピングセンター、サウスコースとプラザの近くに住んでいるが、朝9時前に前を通ると、駐車場はすでに満杯だった。感謝祭が終わって、クリスマスまでの間、どのショッピングセンターもクリスマスギフトを買う人でごった返すので、私は近寄らないようにしている。
クリスマスには、家族親戚、友人、クライアント、同僚などにプレゼントを送るため、皆、何十個ものギフトを買わなければならないのだ。この出費は相当なもので、今年の平均消費額は700ドルといわれ、このシーズンに備えクリスマス貯金をしている人もいる。
日本と違い、アメリカではクリスマスは静かに迎えられる。店は閉まり、皆、家族や親戚と家の中で過ごす。感謝祭で七面鳥を食べるので、クリスマスにはチキンやハムを食べる家族が多い。食事の後は、子供たちには待ち遠しいプレゼントを開ける時間となる。クリスマスツリーの下に並べられたプレゼントには、すべて名前が書いてあり、家族の誰かがひとつずつ名前を読み上げる。
ということで、12月のアメリカ企業訪問は、非効率、かつ非常にいやがられるので、極力避けるていただきたい。