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有元美津世のアメリカ西海岸便り

親や学校も右往左往の大ブーム
日本発”ポケモン”カード争奪戦


  先日、知人のグラフィックデザイナーに「日本の家族に頼んで、ヤシの木のマークの入ったプロモーション用のポケモンカードを入手してもらえないか。近所の子が探してるんだけど、アメリカでは手に入らないんだ」と頼まれた。「このクソ忙しい私に、そんなしょーむないことを頼むな!」と思ったが、彼には、会社の名刺や便箋のデザインの変更を無料でやってもらったところ。また、いつお世話になるかもしれない。一応、努力はしてみよう。

 まずは、電子メールで大阪の妹に聞いてみる。妹によると、甥の一人がポケモンカードを集めているらしい。そこで、その甥の父親である弟に電子メールで尋ねてみた。「なんか、ヤシの木のマークがついた特別なカードがあるらしいんやけど…」。甥に聞いてみてくれたが、わからないということだった。

 アメリカでは、昨年のたまごっちブームに続き、今年はポケモンが大人気を呼んでいる。おもちゃ販売店などの取扱店では、カード入荷後、数時間のうちに売り切れてしまうそうだ。多くの子供たち、小売店、おもちゃメーカーにとって、ポケモンは「しょーむないこと」ではないのだ。

 アメリカでは98年9月にTVシリーズの放映が開始されたのと同時に、ポケモンブームに火がついた。ニールセンの調査によると、TVアニメ「ポケモン」は、アメリカの子供向けテレビ番組で最高の視聴率を得ているという。

 カードは、今年1月に販売が開始されたが、販売枚数はすでに200万枚を超えている。カード以外に、ゲームボーイ、漫画、Tシャツ、オモチャなども出回っている。つい先日、ポケモンのオモチャをアメリカでライセンス販売しているおもちゃメーカー最大手のハズブロ社が、ポケモンカードをライセンス販売しているウィザーズ社を買収した。99年ポケモン関連のオモチャ売上は1億ドルに達する見込みだが、カードの方はその倍になると見られている。

 任天堂アメリカは、全米各地のショッピングモールでポケモンリーグトレーニングトーナメントを催し、子供たちのゲームボーイの腕を競わせる。ゲームコーナー、デモ、カード交換コーナーなどが設けられ、ポケモンファンが殺到するらしい。オンラインオークションやショッピングサイトでも、たいていポケモンコーナーが設けられている。

 ポケモンカードのスターターセットは、そのデザインと品質に対し、全米父兄センターの承認賞まで受賞してしまった。
 今や、アメリカの子供たちに欠かせない存在となったポケモン。親たちは、「ビデオゲームなどに比べ暴力的でない」「静かにすわって友だちとインタラクトしながら遊べる」「戦略を立てたりして頭を使う」ということで概ね好意的だが、子供たちの間のカード交換が親同士の争いにまで発展しているケースもある。「うちの子はあのカードを交換するつもりはなかった」「お宅の子が無理やり交換させた」などと怒鳴り込んでくる親もいるらしい。

 登校する小学生のリュックにはポケモンカードがぎっしり詰まっているそうだが、ゲームに夢中になって遅刻をしたり、下校の際にスクールバスに乗り遅れたり、また交換の際にケンカになったり、売買や盗難なども起こったりして、ポケモンカードを学校に持ってくるのを禁じる学校が増えている。子供たちが授業に集中しないといった理由だけでなく、親から電話があって、「うちの子は、あのカードを手放す気はなかったんですが。何とかしてください」と仲裁を頼まれることもあるらしい。稀なカードでは一枚100ドルもするのがあるそうで、「そんな高価なカードが紛失しても、学校では責任は取れない」というのが理由のひとつだ。

 ついには、取扱店に2500ドル相当のポケモンカードを盗む大人も出る始末。インターネット上にも、子供たちが自分で作ったホームページが山ほどあるが、人気のあるページには毎日何千というアクセスがある。これに目をつけたのが金儲け目当ての大人たち。アクセスの多いページは、広告主にとっては魅力的だが、子供相手に契約をするわけにもいかない。そこで、こうした子供たちのページをホスティングする業者が現れている。子供たちのホームページを集めて、広告主から広告料を取るというわけだ。広告主は、実際にページを作成しているのが子供たちだとは知らない。業者は子供たちと広告料をシェアしているというが、子供たちに妥当な広告料や契約条件などが理解できるだろうか。

 11月には、ポケモンの映画も封切られる予定で、アメリカでのポケモンブームは、当分、続きそうだ。子供たちが、あまり金に目のくらんだ大人たちの食い物にされませんよう。


有元美津世/N・O誌1999年12月号掲載  Copyright GloalLINK 1997-2000

Revised 12/25/1999

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