<アメリカ西海岸便り>
電話に続き電気・ガスも自由化どんどん安くなる光熱費
アメリカでは、電気、ガスなどの公益事業の自由化が進められており、カリフォルニアなど一部の州では、4月日から消費者が電力会社を選べるようになった。つまり、南カリフォルニアに住んでいても、他州の電力会社から電力を買えるようになったのだ。
私も、早速、地元の電力会社からバージニア州にある風力、水力、地熱を使った小さなエコ電力会社(http://www.choosewisely.com)に変更した。今までの電力会社を使っていれば、電気料金が10%値下げされるのだが、私のような小口利用者にとっては微々たる額。それよりも、少しでもクリーンなエネルギーの利用、環境保護に貢献する方が気持ちがいい。そうした考えの消費者は多いはずだ。商品を差別化できないコモディティであったはずの電力だが、競争原理の取り入れられた電力市場では、「クリーンなエネルギー」ということで差別化も図れるわけだ。同社の電力製品には、主に水力発電によるもの、水力、生物体、地熱のブレンド、主に風力発電によるものの3種類がある。価格的には水力によるものが一番安く、風力が一番高い。これは、一定地域で顧客を3000人集めれば、風力タービンを建てるという大掛かりなものだからだ。といっても、既存の電力会社よりも月に11ドルほど高い程度だ。
この会社は、「エコクレジット」というポイント制も取り入れており、たとえば、今月は送られてきた花の種を植えれば、ポイントがもらえる。カープール(相乗り通勤)をするとか、夕食後TVを見る代わりに散歩に行くとか、夕食の際に電気の代わりにろうそくを使うとか、毎月、違った環境保護活動が求められ、それを達成するとポイントがもらえる仕組みだ。このポイントは、提携している業者から商品(有機食品、環境保護製品)を購入するときにディスカウントとして使える。
カリフォルニア州では、ガス市場の自由化も始まっており、消費者がガス会社を選べるようになった。Southern California Gas Co. (南カリフォルニアガス会社)は、Energy Mrketplace(http://www.energymarketplace.com)というウエブサイトを開設しており、複数のガス会社が入札し、料金をもとに消費者が会社を選べるようになっている。
一方、95年に自由化された長距離電話市場では、業者間の競争は激しさをますばかり。AT&T,MCI、スプリントの三大電話会社は、お互いのお客の取り合い合戦に終始徹している。うちの事務所にも、毎週、セールスの電話がかかってきて、「当社に変えれば15ドル差し上げます」という小切手が同封したDMもしょっちゅう送られてくる。「こんな無駄なDMの送付やテレマーケターを雇うのをやめて、通話料金をもっと下げてくれたら使うのに」とケチな私などは思ってしまう。
三大会社はいくら通話料金を下げたといっても、自由化とともに参入した新規業者に比べ格段に高く、私のような、サービスよりも低料金を求めるスモールビジネスオーナーには、三大電話会社は利用できない。自由化と同時に、スプリントから、大手電話会社から大きなブロックで通話権を購入する再販業者に変えた途端、国際電話を含む長距離通話料金は、それまでの半分から3分の1に減った。
その会社は、通話料の支払もインターネットを通じてクレジットカードででき、満足はしていたのだが、エージェントに「もっと料金の安い電話会社がある」と紹介されて、利用業者への忠誠心など微塵も持ち合わせていない私は、その日のうちに価格を比較し、別の会社に乗り換えた。
エージェントというのは、複数の電話会社のサービスを販売している代理店のことで(たいていが在宅ビジネス)、彼らは、新たなサービスが登場すると、随時、お客のニーズに合わせて紹介してくれるというありがたい存在だ。頼まなくてもどんどん電話料金が下がっていくので、あるときエージェントに「こんなに安くなって電話会社はやっていけるのか?」と聞いたところ、「大丈夫。今まで取りすぎていたんだから」という返事が返ってきた。
おかげで、今では、日本まで1分30セント以下でかけられる。こちらから日本に電話すると、国際電話に慣れていない人は「高くつくからもう切った方が...」と言うが、大阪―東京間の通話料金と変わらないのだ。アメリカでも、つい3年前まで、ここから80キロほど離れたロサンジェルス市内にかけるのに1分38セントも取られていた。私が使っている電話会社は、カリフォルニア州内であれば、すべて一分6セントでかけられ、数十キロ離れたところでも、何百キロも離れたオレゴン州との州境にかけても、料金は同じ。今では、自由化されていない近距離通話の方が高くなっており、10キロほど離れた地域にかけた場合、日本のNTTにあたる会社を使った場合、一分8セント、登録している長距離電話会社を使うと5セントなのだ。
つまり、物理的距離と通話料金とは関係ないということだ。私たちが「遠い=高い」と思い込まされている私たち消費者は、電話会社にだまされているのだ。
有元美津世/N・O誌1998年6月号掲載 Copyright GloalLINK 1997-1998Revised 8/1/98
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