<アメリカ西海岸便り>
アメリカ結婚シーン“できちゃった婚”の行く末は...
先月、友人2人が、偶然、同じ日に結婚式をあげた。彼とつきあい始めてすぐに妊娠した友人は、大急ぎで結婚を決断。彼氏の故郷の近くにあるレイクタホの岸辺で式を挙げた。残念ながら、レイクタホまで行く暇のなかった私は、地元で挙げるもう一人の友人の結婚式に出席した。
こちらのカップルは、山あり谷ありの8年を乗り越え、数年、一緒に暮らしてからの、よーく考えた後での結婚で,見ている方も安心である。子供の頃、親と一緒に台湾から移民してきた二人は,結婚式は教会で、披露宴はうちの近くの中華料理レストランで行なった。これまで、日本はもとより、プロテスタント系やユダヤ系の結婚式、スペインでは友人らの手作りによるカトリック式結婚式などに出席したことがあるが、中国系の結婚式は初めてだった。さぞ、おいしい中国料理が食べられることと楽しみだった。出席者は台湾人ばかりで、中国語の飛び交うテーブルに座る羽目になることを予測していた私は,話し相手を確保するために,アメリカ人の友人を連れて行った。
披露宴は、めでたい赤を中心に飾られていた.わざわざ台湾から出席していた親族もおり,進行は,北京語を中心に,ときどき英語の通訳が入って行なわれた。欧米式にダンスもなければ,日本のようにカラオケもなく,始終,静かな披露宴であった。日本と同様,新婦がお色直しをする習慣があるのは面白いと思った。(アメリカ人の友人は,なんであんなにドレスを変えるのかと,私にしつこく聞いていたが。)
料理は,北京ダック,巨大なロブスター,鯛など豪華だったが,あまりおいしくはなかった。(日本では“めでたい”の語呂合わせで鯛を食べるはずだが,中国人もめでたいときには鯛を食べるのだ。)驚いたのは,残った料理が下げらた後,ウエイターがそれをドギーバックにして,向かいに座っていた女性に持ってきたことだ。(この人は,いつの間に,ドギーバッグを頼んでいたのだろう?)また,別の女性は,周りの誰に声をかけるともなく,「人に取られないうちに」といった感じで,急いで,残りの料理を詰めだした。日本人やアメリカ人なら,一応,周りの人間に,「これ持って帰っていいですか?」と聞くところだ。日本人であれば,多分,皆,遠慮して,「私はいいですので,どうぞ」と言うところだろう。中国式では早いもの勝ちなのだ。
ところで,買物のきらいな私としては、結婚式に招かれて一番困るのは、お祝い選びである。アメリカでは、日本のように現金ではなく、台所用品などの物品をプレゼントする。先のかけ足結婚の友人は、デパートで“挙式登録”をしれくれていたので、助かった。“挙式登録”というのは、自分たちがほしいものを選んで,デパートにリストを登録し、お祝いを送る方は、そのリストをもとにギフトを選ぶというものだ。こうすれば、同じものを重複してもらうということがないし、贈る側にとっても、選択肢が限られ、本人がほしいものを贈れるという非常に合理的な習慣だ。インターネット時代の今、このリストは、インターネット上でも見ることができ、オンラインで品物を購入することもできる。私の友人が登録をしていたデパートでは、オンラインでリストを閲覧できたものの、オンラインでの購入はできず、価格も表示されていなかったため、私は、そのリストを印刷して、デパートに出向いて購入することになった。
さて、妊娠を理由に、数ヶ月つきあっただけで結婚を決めてしまった先のカップル。二人とも日本で英語を教えた経験があり、彼の方は、日本から帰ってきたばかりで、就職先を探していたところだった。アメリカに戻って生活の基盤を作ろうとしていた矢先の“思わぬハプニング”に、彼はかなり狼狽したようだ。自分でもまだ何がしたいかわからない25才の彼。初めは、「シングルマザーになる」と強気でいたものの、お腹が大きくなるにつれ、心細くなった彼女に説得され,結婚を決めたようだ。 28才の彼女は高校の教師。日ごろ、生徒に「望まない妊娠をしないように」と説教する立場にいる人間が、とんでもないお手本を示してしまった。
結婚を決めてから一ヶ月後に式を挙げたため、準備は大急ぎで行われた。彼女の方はアラスカの出身で,親戚はカナダや日本にもおり、突然、招待された方も大変である。結婚式の準備に追われると同時に、「相手に無理矢理結婚を強いたのではないか」と心配していた彼女に、「時間がないなら、先に子供を産んで、来年、ゆっくり式を挙げれば」と言ってみたが、「子供を非摘出にしたくない」とのたまう。(そんな世間体を気にするくらいなら、初めから妊娠しないように,もっと注意をすればいいのに。)
大人の友人たちに言わせると、「周りで妊娠を理由に結婚したカップルは、皆、離婚している。妊娠をしたからといって結婚するのは大間違いだ。子はかすがいなんていうのは、真っ赤なウソ.現実には、子供は二人にとって大きな負担となる。試されたことのない二人の絆が,子供の誕生によって初めて試される」と手厳しい。私もまったく同感である。今後の二人を見守りたい。
有元美津世/N・O誌1997年12月号掲載 Copyright GloalLINK 1997
Revised 2/16/98 アメリカ西海岸便りインデックスへ