アメリカ発!ユニーク在宅ビジネス
<釣り・狩猟専門の旅行手配フランチャイズ>
Outdoor Connectionは、北はアラスカ、カナダから南はメキシコ、コスタリカまで、100軒以上のロッジやリゾート地と提携し、個人客のほか、企業の研修や接待、会議向けに、釣りと狩猟を専門とした旅行を手配するサービスを提供している。
たとえば、現在、同社が手配した歯科グループが、講習を兼ねてカナダに滞在している。彼らは昼間は釣りをするなどレジャーを楽しみ、夜に講習を行なう。たんに宿泊や乗り物など旅行の手配だけでなく、各滞在地に応じて、釣りや狩猟に関するコツ、持参すべきギアや衣服などのアドバイスを行なうのがセールスポイントだ。
同社は、子供のときから釣りと狩猟を愛好しているラデュソー社長が1986年に設立。はじめの一年間は自宅で運営した。ところが宣伝のためにスポーツ関連などの見本市に行くたびに、多くの参加者が趣味と実益を兼ねたこの事業に興味をもっているのを知り、全米で唯一の釣りと狩猟専門の旅行代理業のフランチャイズとなった。
「FC化にはお金がかかるのと、法律が違う各州でFC化の許可をとるのは大変だったが、事業拡大に大いに役立った」と、今年FC開始10周年を迎えるラデュソー社長は満足している。
FC加盟店は100店以上にのぼり、加盟者のほとんどがパートタイムの在宅ビジネスである。「皆、いろいろな分野でフルタイムの仕事に就いており、そこでの人脈が顧客開拓につながるので、FC加盟店には仕事は辞めないことを勧める」とラデュソー社長。
FC加盟者の職業は、会計士、弁護士、営業マン、ウエイター、(定年)退職者などさまざま。
加盟店は、企業の要望や自分の人脈を活かして、ツアーを企画し、参加者を募る。加盟店になるための最大の条件は釣りや狩猟が好きであること。ツアーに同行する必要はないが、釣りや狩猟のアドバイスをしなければならないからだ。FC希望者から、毎日3〜5件の問い合わせがあるという。
同社には釣りや狩猟の場を提供できる全米のロッジからパッケージに加えてほしいという依頼がくるが、ボートなどの機具、宿泊施設、食事、従業員、経営者の人柄などを吟味。新しい提携ロッジを加える前に、必ずFC加盟店をともなって実際に宿泊し、釣りや狩猟を試してみる。
利用客は通常の料金を払うが、Outdoor Connectionは大量ディスカウントを得るため、その差額数%が、同社とFC加盟店の取り分となる。旅行代理店と同じでロッジを予約すればロッジから、航空券を販売すれば航空会社からコミッションが得られる。
フランチャイズ料は5800ドル。その他、TVとビデオ機が必要だ。また、釣りや狩猟の好きな顧客を獲得するには見本市がもっとも有効な手段であるため、新しいFC加盟店には最初の1年間に3つの見本市に出展することを勧めるという。ファイナンスが必要なFC加盟店には、前金を半額の2900ドルにし、残りを1年間の月賦にしている。FC加盟店は、運営マニュアル、ビデオテープ、名刺、便箋、封筒、ディスプレイ用サインが支給される。その他、2日にわたる研修、年に2回のニュースレター、サポート広告プログラムなどもあり、毎年12月には年次大会が開かれる。
特にアラスカには日本やヨーロッパからの釣り客が多く、ドイツ人客専門のロッジなどもある。海外でのニーズに応じ、今後、日本、ヨーロッパ、南米などにマスターフランチャイズを販売していく予定だ。
<乳がん患者向け補正用品販売装着サービス>
乳がんで乳房を切除した後、体のバランスを取るために人工乳房などの補正用品が必要となる。そうした用品を販売する店はたくさんあるが、デパートや一般の店では周りの人に会話の内容が聞こえプライバシーがなく、また認定人工乳房フィッターを置いていない店も多い。カンザスにあるWith You in Mindでは、女性たちがプライバシーを守れリラックスした環境で買物ができるよう、自宅に出向いて人工乳房や補正下着の販売装着をするサービスを提供している。「自分の家でリラックスしながら、服を上から着た装着感を確かめられる」と訪問サービスの利点を創業者のロンダ・ウエッブ氏は語る。
まず電話でサイズや好みなどを聞き、いろいろな形の人工乳房(フォーム)を持参する。胸壁装着型、一般の人工乳房より25%軽い軽量型のほか、汗を吸収する冷却パッド、補正ブラジャー、術後キャミソール、放射線による火傷用ローションなども販売している。製品は5社のメーカーから直接仕入れる。
ウエッブ氏は認定フィッターの資格を取って18年になる。もともと1965年に母親が始めたランジェリー店で認定フィッターとして働いていたが、量販店におされ、1990年には閉店。しかし、人工乳房は2年間のメーカー保証が付いているため、廃業後もアフターケアが必要だ。シングルマザーだったウエッブ氏は、在宅でできる事業形態を思案し、製品を各顧客の自宅に届けてフィッティングすることを思いついた。カンザスシティ地域にも同業者はいるが、在宅ベースで行っているのはウエッブ氏のみ。全米でも数少ない。
平均装着数は1週間に8〜20人。夜間や週末でも、顧客の都合に合わせアポイントを取る。年にブラジャーを3枚だけ購入するといった顧客も含め、顧客数は計400〜500人。
「外見も感触も手術前と同じだと喜ぶ顧客の姿を見るのが何より楽しくやりがいがある」とウエッブ氏は言う。
競合他社に勝つための付加価値サービスとして、ウエッブ氏は顧客のために保険会社への保険金請求手続きを無料で代行する。補正用品の購入は、顧客が料金を支払うのではなく、顧客が契約した保険会社より代金が支給される。その手続きは煩雑で、かつ保険会社はなるべく保険金の支払いを避けようとする。「保険会社とのやりとりが一番大変な作業です」とウエッブ氏はため息をつくが、料金回収の手段ともなるだけに、重要な仕事だ。
多くの顧客はクチコミによるもので、外科医や腫瘍医からの紹介も多い。サービス内容を記述した手紙とメーカーの製品パンフレットを看護婦や医師を通じて患者に渡してもらう。ウエッブ氏は、まず自分のかかりつけの医師に外科医や腫瘍医を紹介してもらい、電話による売り込みから始めた。
はじめの1年で売上高は3倍増え、今年も3割増を予測している。
ウエッブ氏は、将来、乳がん患者のカウンセリングサービスや、リンパ浮腫用耐久性医療機器の販売を計画している。「できるだけ多くの乳がん患者をできるだけ多くの方法で助けること」がウエッブ氏の目標だ。
<モバイル機器フル活用 出張検視サービス>
アメリカの医療機関では、過去10年ほどコスト削減のためにサービスを次々とカットしているが、検視サービスもそのうちのひとつだ。1978年時には死亡件数全体の半分を占めていた検視件数は、今では5%に落ちているという。
「死亡件数は増えているのに、検視件数は激減している。年間240万人の死亡者の死亡原因の10.5%が医療ミス、22%が診断ミスであることを考えると、これは恐ろしい数字」というのは出張検視サービス会社、Autopsy/Post Services社長ビダル・ヘレラ氏だ。
同社は事務所を持たず、車で病院や葬儀会社に出向いて検視を行なう。ワゴン車にはポケットベル、ボイスメール、ファックス、電話、ラップトップ、プリンター、手術用器具、保存容器、写真撮影器具を搭載。フリーダイヤルにかかった電話はボイスメールにつながり、どこにいてもすぐにメッセージを聞いて連絡が取れる。サービスは通話を受信後、4〜8時間以内に提供する。11人の検視医と契約し、検視自体は病院や葬儀会社の施設を使って行なわれる。
検視サービスは休日も含み週7日、一日23.5時間(30分は瞑想時間)提供。検視料金は2, 000ドルからと、病院よりかなり安い。検視件数は平均一日数件。
一般の検視のほか、法検視、毒性・血清分析、組織・臓器調達、発掘検視、アルツハイマー、多発性硬化症、ダウン症候群などの神経学的診断、医療写真撮影・ビデオサービス、医療機器リサイクル、映画・テレビ製作コンサルティングなどさまざまなサービスを提供している。
ヘレラ社長は、元ロサンゼルス郡検視長官室の副フィールド検視調査官。84年、遺体を持ち上げた際に腰を痛め、結局車いすの生活を強いられ退職。リハビリで奇跡的に回復後、 1988年に、元同僚の紹介で、ある病院で検視を行なったところ、出張検視サービスとしてクチコミでまたたく間に広がった。
検視依頼は南カリフォルニアだけでなく、全米、海外からも寄せられる。遠隔地の場合、遺体がロサンゼルスに飛行機で運び込まれる。検視医を派遣するより、貨物扱いとなる遺体を運んだ方が費用が安いからだ。
同社では研究機関向け臓器組織調達サービスや、発展途上国に眼鏡、補聴器、ペースメーカー、車イスなどの無料寄贈サービスも行なっている。さらに死のポジティブな面を社会に啓蒙するため、ヘレラ社長は、葬儀会社、医大、病院、臓器組織移植機関、医療機器のリサイクリング機関をインターネットでつなぎ、情報交換の促進のために、管理機能を集中化させた総合リソースセンターを計画中だ。
全米だけでなく、世界各国からの問い合わせに応じ、ヘレラ社長は、巨額の資金を必要としないフランチャイズによる事業拡大を選んだ。今後、7年で、全米72都市、日本を含め16カ国にフランチャイズ網を広げる予定だ。
文・有元美津世/株式会社ベンチャーリンク刊NO誌1998年9月号
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