スモールビジネスによるテクノロジーの利用


 スモールビジネスの台頭を可能にしたのが、インターネット、ボイスメール、携帯電話などのテクノロジーの普及であったことは言うまでもない。スモールビジネスがこうしたテクノロジーを大いに活用していることが多くの調査で示されており、また、同時にこうしたテクノロジーに対するニーズが、前回、説明したスモールビジネス市場の成長を促している。

  <スモールビジネスによるテクノロジーの利用>
アメリカには920万のスモールビジネス(従業員100人未満)が存在し、そのうちの75%にあたる690万がパソコンを所有している。
中小企業へのパソコンハードの出荷は97年の380万台から2002年には750万台におよそ倍増すると予測されている。この背景には大企業から中小企業への雇用ベースの移行(新たな職の多くが中小企業で生まれている)、大企業向けパソコン市場の飽和があげられる。

 別の従業員100人未満のスモールビジネス(在宅ビジネスを除く)を対象とした調査では、97年に関し次のような結果が出ている。 スモールビジネス全体の35%にあたる250万社がインターネットを利用しており、90万社がウエブサイトを開設し、そのうちの半数がEC(電子商取引)を実践している。ちなみに、97年のスモールビジネスによるオンライン売上推定額は35億ドルである。

 スモールビジネスによる情報技術および通信への投資推定額は1380億ドルであり、このうち、580億ドルがPCハードおよびソフト、ネットワーキング、オンライン関連サービス、790億ドルがセルラーなどの電話サービスに対してであった。別の調査によると、97年に電話会社が敷設したローカル電話回線は、電話回線が50回線以上の企業よりも25回線未満の企業向けの方が多かったという結果も出ている。
また、小規模企業(従業員100人未満)、中規模企業(100人以上500人未満)を対象に行なった調査では、97年よりも99年にかけて、コンピューター、ネットワーキング、情報技術への投資額をかなり増やす予定の中規模企業が57%、小規模企業が39%あり、予定投資額の中間値はそれぞれ162.4万ドル、50,610ドルである。

さらに、売上500万ドル未満の中小企業を対象に行なった調査では下記のような結果も出ている。 44%の企業で事務所ベースの従業員は全員コンピューターを所有しており、41%の企業がインターネットを利用している。52%が1年以内にコンピューターをアップグレードする予定である。しかし、16%が社内の電子メールネットワークを所有しておらず、コンピューターシステムスペシャリストを雇っているところは25%に過ぎない。
 これで、コンピューターへの依存度は増しているものの、社内ですべて調達・管理はできないという中小企業の実態が浮き彫りにされている。

<在宅ビジネスによるテクノロジーの活用>
  日本でSOHOと言えば、インターネットやマルチメディアなどのテクノロジーを駆使したビジネスと一部解釈されているように、在宅ビジネスの間では、特にテクノロジーの利用度が高い。
アメリカでも非在宅ワーカー(8%)に比べ、在宅ワーカーの方が(30%)インターネットの利用度は高いが、その中でも特に在宅ビジネスの利用度が46%ともっとも高い。また、在宅ビジネスの47%が1年以内に情報技術への投資を増やすと答えている。

アメリカの在宅ビジネスによる情報技術ツールの利用状況は、デスクトップ(73%)、専用電話回線(63%、プライベート用と別に仕事回線を引いているという意)、ファックス(62%)、モデム(57%)、CD−ROM(53%)、カラープリンター(42%)である。ラップトップは20%と以外に低い。(vii) また、通信サービス利用状況については、留守番電話(86%)、携帯電話(57%)、キャッチホン(53%)、複数電話回線(48%)、ファックス・モデム用専用電話回線(46%)、ボイスメール(41%)、イエローページ(39%)、ポケットベル(31%)、会議通話(26%)、発信者番号通知サービス(26%)、フリーダイヤルなど(10%)という結果である。(vii)

留守番電話(またはボイスメール)、電子メール、インターネットなどはSOHOの必需品といえるだろう。こうしたテクノロジーをうまく利用すれば、少なくとも従業員一人分の働きはする。SOHOが成功するかいなかは、こうしたテクノロジーをいかにうまく利用し、効率よい運営を行なうかにかかっていると言っても過言ではないだろう。


iデータクエスト
ii IDC
iii アクセスメディア・インターナショナル
iv ヤンキーグループ
v ヤンキーグループ
vi アーサーアンダーセン、National Small Business United
vii 米国女性経営者財団

文・有元美津世 (財)科学技術と経済の会 『技術と経済』1998年8月号掲載


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