英語の翻訳は仕事外
メディアとのつき合い方は、ひと言でいえば、メディアも顧客として扱うということです。
私が日本の出版社からの依頼でアメリカの起業家を取材する際、起業家から「雑誌に掲載された原稿を英語に翻訳してほしい」という依頼をよく受けます(これは、メディアとの対応に慣れないSOHOなどのスモールビジネスによく見られます)。
あるSOHOを取材した際にも「英語に訳してほしい」と頼まれたのですが、いつものように、私は断りました。
理由は、
1)私は出版社から取材をして原稿を書くことに対して原稿料をもらっているのであり、翻訳をするのは私の仕事ではない。
2)翻訳スキルというのは立派な専門スキルであり、外国語がしゃべれれば、誰でもプロの翻訳ができるというものではない(これは一言語しか話さない人間によく見られる誤解)。「無料で翻訳しろ」というのは、プロとして翻訳業を営んでいる人たちへの冒涜と考えるからです。
メディアを喜ばせるには?
私が断ると、その取材先は、「原稿が日本語でしか書かれないとわかっていれば、初めから取材に協力していなかった。なんという“顧客サービス”だ。私が毎週発行している顧客サービス関連のニュースレターに書いてやる!」といったフレーム(flame)ともいえるメールを送ってきました。
私は取材を申し込む際には、「日本で日本語で出版されるビジネス雑誌である」旨、明記された定型メールを送ることにしています。ですから、「日本語でしか書かれないとわかっていたら」というのは、相手の誤認識と言わざるを得ません。それよりも、私が驚いたのは、相手が取材される側が“顧客”だと思っていることでした。
さらに、その取材先は、相手への罵声、「〜してやる」といった脅迫まがいの内容を記録として残る文書で送るという非常にアンプロフェッショナルな行為を取りました。
このような内容のものをメディアに送るなどというのは絶対に禁物です。
「ペンは武器」ともなるのです(事実、こうやって、悪い例として、あちらこちらの媒体で取り上げられることになるというわけです)。
残念ながら、このSOHO事業者は、メディアとの対応の仕方をまったく理解していなかったのです。メディアの仕事は、その顧客である読者、視聴者を喜ばせること。メディアを喜ばせるには、その顧客を喜ばせる手伝いをしてやることです。
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