高い運賃、西部開拓時代のような駅
前回、テロのために飛行機が飛ばず、シアトルから列車で帰ってきた話はしたが、いつもならガラガラであるアムトラックの乗客は、飛行機に乗れず、やむなくアムトラックを選んだ人たちがほとんどだった。テロ事件当日だけでも、アムトラックは通常の倍の400万ドルを売り上げたという。
そのスピードとは逆に、運賃は驚くほど高かった。「緊急事態を逆手にとり、通常より高い運賃を徴収している」と憤慨する乗客もいた。電鉄会社やレンタカー会社には、政府から料金を吊り上げないようにというお達しが出ていた。
東海岸には駅らしい建物やプラットフォームがあるが、西海岸の駅というのは西部開拓時代からほとんど変わっていない。ほとんどの駅は、日本の小さな町や村にあるような掘っ立て小屋のような建物で、中には売店すらない。席の指定は、各車担当の車掌が手作業で行なう。そのため、夫婦や友だちと旅行していても、バラバラの席を指定されるケースが続出した。
ほとんどの駅にはプラットフォームはなく、線路の上に降り立つのだが、列車が駅に着くたびに、各車担当の車掌が手動でドアを開き、ステップを置く。出発前にはドアを閉めてステップを車内にしまう、という作業が繰り返される。車掌が来るまで、列車には乗降できないのだ。
飛行機、車のみで、代替交通手段がない
アメリカでは、飛行機が旅行の足となっており、バス感覚で使われている。もちろん、日本の25倍という国土を縦横断するには飛行機が最適であるわけだが、飛行機以外の交通機関の開発を怠ってきたツケは大きい。
アメリカの大都市では、ここ数年、交通渋滞の悪化が激しい。以前なら1時間で行けたところが、今では2時間かかるといったケースはざらである。交通渋滞はどこの国でもあるが、たとえば日本やヨーロッパとの違いは、アメリカには代替交通手段がないという点だ。道が混んでいるから、バスや電車を利用するというわけにはいかないのである。
ここ南カリフォルニアは、アメリカでも交通渋滞がひどい地域で有名であるが、これまで電車網を構築する計画は何度も浮上した。しかし、たいてい石油会社によってつぶされてきたのだ。
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