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テロのせいではない、不景気の本当の理由



テロへの責任転嫁はもううんざり

日本のニュース番組で、毎回、「アメリカはテロの影響で不景気となり…」といった趣旨の発言をする番組がある。まるでテロさえなければ、アメリカの景気は好調を続けていたかのような口調だ。

アメリカでも、私がクライアントを失ったり、私の知人が職を失ったりした話をすると、「たった1人の人間(=オサマ・ビン・ラディン)のために…」という反応をする人がいる。

私がクライアントを失ったのは、テロとは関係がない。IT産業の衰退が原因であり、インターネットやITを専門としている私のビジネスが、いずれはその影響を受けるであろうことは覚悟していた。職を失った知人が勤めていた会社は黒字経営であり、カリフォルニアの工場閉鎖は製造部門の効率化のためで、テロとは関係がない。

テロ事件がそれまで好調であった景気を突然どん底に突き落としたわけではない。経済学者が発表したように、アメリカの景気後退は2001年3月から始まっていたのだ。

むしろテロ事件を利用している

IT業界にいる人間には、それは明らかだった。2000年4月、ナスダック株式市場が暴落した後、ドットコムが次々につぶれ、インターネットバブルがはじけた。それが、通信業者やITベンダーに波及し、IT業界全体が揺さぶられていた。テロ事件の影響で、景気後退のスピードが速まっただけだ。

9月に人員削減を発表した企業には、テロ以前に人員削減を決めていたところが少なくなかった。もともと人員整理を計画していた企業にとっては、それをテロのせいにできて幸いしたといえる。

テロ事件で最大の影響を受けたのは航空会社だろうが、テロ事件以降つぶれた航空会社は、以前から経営危機がささやかれていたところばかりであり、つぶれるのは時間の問題だった。テロのために、その時期が早まっただけなのだ。

アメリカの航空会社もテロ事件以前から四苦八苦していたが、テロ事件のおかげで、150億ドルという公的資金を連邦議会から引き出すことができた。 資金を取り付けた後も、航空会社は何万人という人員削減を取りやめる気配はない。航空会社の従業員らは、航空会社は経営者側、投資家の利益を守るために、テロ事件を利用していると憤っている。納税者にとっても、税金が一部の企業や投資家を救済するために使われては、たまったものではない。

すべてをテロのせいにするのは簡単だ。 しかし、なぜテロが起きたのかという根本的な原因追求がされず、当初の戦争の目的も見失われたいま、物事の本質をこれ以上見失いたくないものだ。  


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Revised 2/1/02




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